品種改良によって生まれた新品種を、どのように扱うかという議論は、ここ数年、特にヨーロッパで盛んになっている。これまでの特許制度は、イノベーションの発展や知的財産の共有、そして研究開発への継続的投資を促す役割を担うとされてきた。
しかし、その一方で、ある開発者の持つ知的財産が過剰に保護されることが、むしろ他の開発者の研究を遅らせてしまうのではないかという議論があった。
なぜなら特許として認められた品種は、その開発者自身でないかぎり、特許権の有効期限が切れるか、もしくは高い対価を支払ってからでしか利用できなかったからである。
このような議論を受けて、スイス・ドイツ・日本・フランス・オランダに拠点を持つ11の企業(上場企業を含む)が「早急かつ効率的に、少ない費用にて価値のある品種を世界中に広める」ことを目的に共同で、2014年11月に国際ライセンスプラットフォーム(ILP)を設立した。この制度の下で取引されるのは、ILPの会員企業が現在特許権を持つとされる品種である。
この許可制度では、他の会員が特許権を持つ品種を利用しようとする場合、双方は即交渉体制に入ることができる。また3か月以内に合意に至らなかった場合、その後は独立機関による調停が実施される。
この調停方式にはベースボール調停が採用され、新品種の利用許可を申請する者、その品種に対する特許権を持つ者の双方が利用料金を提示することができる。
調停者は、より妥当と思われる金額を選ぶのである。一般的な調停と異なるのは、双方の主張する金額を元に妥協点を提示するのではなく、双方が主張したどちらかの金額を調停者が選択する、という点にある。
また、新品種に対する利用料が決定されると、その金額は他の会員にも公開される。この仕組みによって制度自体が透明化され、全ての企業が妥当な価格で新品種を利用する機会が得られるのである。
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