代替肉ブームの到来、海外の市場動向レポート

食糧危機問題や環境問題を追い風に急発展する「代替肉」
代替肉ブームの到来。2016年の市場規模は約40億円

 2017年6月、米国オクラホマ州に本社を置く「Sonic Drive-In」が、牛肉70%とキノコ30%からなるパティを用いたハンバーガー「Slinger」を発表した。同社は、米国内に約3,500店舗を展開する全米13位(売上高ベース)のファストフードチェーンである。

この新しいハンバーガー「Slinger」は、従来商品と比べて脂肪分やコレステロール、カロリーが少なく健康的であるほか、環境負荷も少ない。しかし同社は、そういった健康面や環境面よりも、美味しさを中心に訴求していくつもりだという。

※ 写真: Sonic Drive-In社の新作商品「Slinger」の発表の様子。CSSI Marketing+CulinaryのInstagramより

海外の「代替肉」市場の動向について
 これまでにも、食肉をキノコや大豆などで代替しようとする動きはあった。英国のMarlow Foodsが1985年に発売を開始した「クォーン」がその代表格である。クォーンは、菌類を加工して食品化したものであり、ベジタリアンの人々などの需要をつかみ欧州を中心に現在も流通している。

もっとも、今のところレストランなどでクォーンなどの代替肉が提供されることはまれであり、未だ食事における一般的な選択肢というには程遠い印象がある。


 しかし近年、環境問題などを背景に「Better Burger Challenge」(*1)のような肉食中心の食生活を見直す動きが活発化しており、代替肉市場の急成長に再び注目が集まっている(*2)。

その中にあって、上記のSonic Drive-inの取り組みは、通常健康面や環境面よりも美味しさを志向するファストフード業界で起こっているという点で、新たな代替肉の時代を象徴しており、代替肉の加工技術がとうとう「味」の分野でも本物の食肉に対する勝利を狙い始めたといってよいだろう。

*1: 資源消費の象徴であるアメリカのハンバーガーを、健康面、環境持続可能性、動物福祉などの観点から「より良い」ものに変え、家族経営の農家や牧場経営者にチャンスを提供することを目指す取り組み。

*2: 2016年の代替肉の市場規模は、2010年対比で42%増加し、約40億ドルとなっている(Market and Market社の調査)。

投稿者プロフィール

八隅 裕樹
八隅 裕樹
・神戸大学経営学部 卒(2012年)
・兵庫県信用農業協同組合連合会 入会(2012年~現在)
・コロンビア大学ビジネススクール 客員研究員(2017年~現在)

【資格】
・中小企業診断士 ・応用情報技術者

【研究】
・農業、食品産業 ・農業金融、協同組合金融 ・金融・経済史