ソフトバンクなど、米国の垂直式・植物工場ベンチャーへ2億ドルを投資

 ソフトバンクグループは2017年7月19日、垂直式の完全人工光型植物工場システムを開発する米国のPlenty社に対して「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が主導する「シリーズB」により2億ドルの投資を行った。

今回の資金調達では、Googleの元CEO・現在はアルファベット社会長のエリック・シュミット氏、ルイス・ベーコン氏が率いる米ヘッジ ファンド運営会社ムーア・キャピタル・マネジメント、アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾス氏による投資ファンドBezos Expeditions、アグリテック分野の専門ベンチャーキャピタルであるFinistere Venturesなども投資を行っている。
その他、今回の資金調達以前から支援しているDCMベンチャーズも入っている。

ソフトバンクなど、米国の垂直式・植物工場ベンチャーへ2億ドルを投資同社が開発した植物工場の特徴は、約6mの垂直式のLED栽培であること。

他の植物工場と同様に、IoTにて全て管理されており、LED光源の波長・照射時間、エアコンの稼働時間、温度・湿度・液肥などを自動でコントールすることができる。

また他社が平面多段式を採用する一方で、同社の垂直式栽培では空調管理が行いやすいメリットがある。

蛍光灯より少ないが、LEDの基盤部分などから多少の発熱があり、平面多段式では熱がこもりやすく特別な空調システムが必要となる場合もあるが、垂直式の場合は、一般的な空調システムにて効率よく冷却することができる。

創業は2014年。植物工場ベンチャーとしては未熟だが、ポテンシャルあり

 同社の設立は2014年。農家の息子であるマット・バーナード氏と、別の植物工場施設にて働いた経験のある農学者ネイト・ストーリー氏が創業した。当初は複数の投資会社から2,600万ドルの投資を受けている。

現在はサンフランシスコに自社施設を稼働させ、パープル・ケール、赤系のリーフレタス、ソレル、バジルやチャイブなどのハーブ野菜を栽培し、生産した商品を消費者やレストランのシェフ等に試食・評価中である。

既にフィードバックされた意見では、既存のスーパーにて販売されている野菜より新鮮で美味しい、という評価が大半を占めている、という。同社による収穫すぐの野菜は、露地・施設栽培や他社の植物工場のものより品質が良いと自信を持っている。

 同社では年内に、サンフランシスコのベイエリアでの販売を開始する予定としている。翌年の2018年に全米の主要都市での施設建設や地産地消やさいの供給を計画しており、将来的には中国や中東など、世界中の都市部での植物工場建設を目指す。

競合他社の平面多段式の植物工場より・空間あたりの生産効率が良い

 同社の試算によると、米国の他社企業による平面・多段式の完全人工光型植物工場より、同じ面積あたり約3倍~の収量差があると主張する。

垂直式を採用することで、一般的な空調設備であっても、効率の良い冷却を実現し、設備・運営コストを削減できるだけでなく、野菜の密集栽培も可能となる。

日本と異なり、米国の平面多段式は1段あたりの棚間が広く設定される傾向が強く、正確な計算ができるかは疑問だが、米国市場での優位性はあるといえるだろう。
面積効率が良いため、小規模で十分な生産量を実現でき、その分の建設費用も縮小できることが考えられる。

なお、垂直式が適しているかどうかは別問題として、葉野菜だけでなく試験的にはキュウリの栽培にも成功しており、将来的には果菜類や果物の栽培も視野に入れている、という。

ソフトバンクからの資金調達が実現できた理由・経緯

 今回は設立時から支援しているDCMベンチャーズの共同設立者であるDavid Chao氏がソフトバンクの経営陣に紹介したことがキッカケと報じられている。

他社メディアや記者会見などの情報を整理すると、結論としては1時間以内のミーティングを経て、2週間後にはソフトバンクの孫正義社長がPlenty社の将来性を評価して投資を決定した、という。

孫正義社長も「人口が急増する都市エリア、農業に適さない過酷環境下において、新たなフード生産・流通システム(地産地消モデル)を構築する可能性を持つ」と期待している、とコメントしている。

 ここからは推測になるが、孫正義社長のコメントから判断すると、”周年生産・生産性を飛躍的に向上できる多段式の植物工場” という点に評価をしているようで、他社との技術優位性や差別化ポイント等、細かい調査・評価を行っているかどうかは不明である。

むしろ、詳しい技術内容というより、信頼性のおける投資家からの紹介が投資に至ったという経緯が強いように感じられる。

Plenty社における課題と米国市場での参入タイミングについて

 Plenty社によると、サンフランシスコにある現在の自社施設は小規模であり、利益を出すことは難しい、と断言している。

直近の課題は、手作業の工程が多く、いかに作業効率を向上させ、省力化・自動化を確立していくかどうか、という点である。
野菜商品の品質や垂直式を採用した生産性には、大きな自信を持っている。

 数年前と比較すると、LEDの調達価格も大幅に下がり、その他のセンサー価格やサーバーのレンタルフィーなど、植物工場に関する技術革新により製品・サービスの向上と、設備プラント全体の初期投資額も下がっている。

米国において、同じ生産能力を持つ植物工場(完全人工光型・平面多段式)を、数年前に建設した場合と現在とを比較すると、弊社の独自調査でも、内部の設備プラントの建設コストが平均して、約3割減にて実現できている。

他のビジネスでも同様だが、植物工場の成功にも参入の時期・タイミングも重要であり、「数年前は早すぎた」と主張する専門家も多い。その証拠に、米国でも数年前に稼働した大型施設の倒産事例が徐々に出現しているが、それ以上に参入企業数も急増している。

 今回、2億ドルの投資を受けたPlenty社についても、大規模な資金調達をもとに、日本企業とは比べものにならないスピード感で、開発や施設建設を進め、世界の都市部における植物工場市場を独占する可能性もあるだろう。