先月末11月30日、北海道帯広市の北海道ホテルにて、北海道最大級の農業カンファレンスであるファームノートサミット2016が開催された。
(株)ファームノートが主催しており、多様な課題を抱える一次・二次産業の中でイノベーションに貢献している経営者が、どのような思いで事業を推進し、市場に答えを出しているのか、パネルディスカッションを通して、農家・一般企業経営者へ新しいヒントを提供することを目的としている。開催は今回で6回目となる。
今回のテーマは「Be Connected.」=「つなげる」。消費と生産をつなげる新しい形を作り上げた人々を招き、人と人、モノ、農業、チャレンジ、人工知能をつなげることで、どのような大きな価値が生まれるのかを議論した。
第一セッションの「生産と消費をつなぐ次世代農業事例」では、パネラーに、食肉の加工販売に力を入れる(株)トヨニシファームの小倉 修二、宮城の復興を目指し“ミガキイチゴ”の生産販売にITを駆使する(株)GRAの岩佐 大輝、地域の食を豊かにし牛乳の消費増を目指す(有)希望農場の佐々木 大輔、一次産業のブランディングの先駆者である(株)ファームステッドの阿部 岳を招き、モデレーターは(株)ファームノートの小林 晋也が務めた。
各パネラーともに、取り組みのきかっけは様々であったが、人との信頼関係を築くことの難しさ・重要性は共通したものであった。特に、IT化やブランディングというような新しい手法を導入する際、それらに抵抗を持つ人々との価値観の齟齬(そご)が導入の妨げになってしまうことも少なくないようだ。
例えば、阿部氏は「ブランディングの必要性を感じない人が多く、実際の導入事例や具体的な実績を説明することで、はじめて興味・関心を持ってもらい、効果を実感してもらえる」と話していた。
また、現在の農業ビジネスについて、佐々木氏は「責任を取る覚悟があるのであれば何をしても自由であり、将来は社会に役立つことをしたい」、小倉氏は「農家として日々の普遍的な作業をしっかり行うことが大切」「チャンスかどうかではなく、身近にあるチャンス、面白いことに気づくことが大切である」と述べていた。
岩佐氏は「あくまでもTPPなどは外部環境であって、声を上げる事よりもまず自分が変化に対応することが大切だ」と主張していた。
このセッションでは、“生産と消費をつなぐ” というテーマであったが、6次産業化というブームに乗ることで生産・販売の両方が中途半端になることは避けなければならない、といった声や生産者同士でのコミュニケーションが最も重要である、というように「生産」という基本となる農業を重要視する意見が多かった。
・(株)ファームノート、(株)GRA、(株)ファームステッド、(株)トヨニシファーム
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