【追加:植物育成用LEDバー照明ユニットの量産販売を開始】稲など穀物用のLED照明の販売へ(ウシオライティング/昭和電工)

ウシオライティングでは、棒状の形をした植物育成用LEDバー照明ユニット(以下、LEDバー照明)を完成させ、3月15日から量産販売を開始する。このLEDバー照明は、植物の光合成を促進させる、波長660 nm(ナノメートル)を高出力で発する赤色LED素子と、形態形成作用に効果のある波長450nmを発する青色LED素子をそれぞれ実装、パッケージングしたLEDを、それぞれ最適数量で基板上に最適配置し、バー形の照明ユニットとして仕上げた商品。以下、同社のプレスリリース文を掲載しておく。


 

植物工場での葉物野菜の栽培に適したLED照明
「植物育成用LEDバー照明ユニット」量産販売を開始

 
ウシオライティング株式会社(東京都中央区/代表取締役社長 山中茂樹)は、現在、植物工場でよく使われている蛍光灯と比べて、より、葉物野菜の栽培に適した「植物育成用LEDバー照明ユニット(以下、LEDバー照明)」を完成させ、3月15日から量産販売を開始したことを、お知らせします。
 
このLEDバー照明は、植物の光合成を促進させる、波長660 nm(ナノメートル)を高出力で発する赤色LED素子と、形態形成作用に効果のある波長450nmを発する青色LED素子をそれぞれ実装、パッケージングしたLEDを、それぞれ最適数量で基板上に最適配置し、バー形の照明ユニットとして仕上げました。閉鎖型植物工場で、葉物野菜を安全、均質に、しかも安定生産する必要がある産業型農業に適した光源です。
 
【LEDバー照明の特長】

■葉物野菜生産・栽培に適した波長とPPFD(光合成有効光量子束密度)*1
閉鎖型植物工場で一般的に利用されている蛍光灯は、人の「目の感度」に合わせた、いわゆる比視感度を基準として作られた人工光源で、植物育成用途としては、光合成や形態形成に必要な特定波長を効果的に照射できるものが、最適な人工光源といえます

ウシオライティングは、植物育成に有効と言われる波長660nmおよび440nmのLEDをバー上に配置、多くの葉物野菜が育成できるPPFD値 170μmol・m-2・s-1(マイクロモル・平方メートル・秒)*2を実現した人工光源として製品化しました。
 
■効率的な育成、栽培が可能
LEDバー照明をテスト使用した植物工場において、蛍光灯環境下では通常30日程度かけて栽培、出荷される葉物野菜が、栽培期間を数日短縮できたという結果が出ています*3。

この結果から、LEDバー照明を使用することにより、年間栽培回数の向上に繋がるだけでなく、面積あたりの年間収穫量アップにも繋がるので、効率的な育成栽培に貢献します*4。
 
■省エネ
一般的な40W蛍光灯1本に対して、LEDバー照明1台は37Wなので、1台あたり約3Wの省エネになります。通常、閉鎖型植物工場では複数の栽培棚で植物を育成していることから、1棚あたり蛍光灯を6本程度使用していますが、これと同等の育成環境を、LEDバー照明なら4台で実現します*5。その結果、蛍光灯:40W x 6台=240Wに対して、LEDバー照明:37W x 4台=148Wで済むため、約40%の省エネになります*6。
 
■長寿命、環境負荷低減
一般的な蛍光灯の定格寿命が約1〜1.2万時間とされるなか、LEDバー照明の定格寿命は約2万時間で、約2倍の長寿命を実現します*6。また、LEDバー照明は、水銀など環境に負荷を与える材料を使用していないことから、環境に配慮した製品であるといえます。
 
■発熱温度低減
光源の発熱温度を比較すると、蛍光灯は表面温度が50〜60℃に達するのに対して、LEDバー照明では表面温度40℃と、10〜20℃低くなります*6。結果、蛍光灯による栽培で発生しがちな、葉物野菜の葉焼けを低減することができます。
また、副次効果として、空調にかかる費用も抑えることができます。
 
■光学設計技術
照明の総合メーカとして、ウシオライティングが培ってきた光学設計、配光シミュレーションなどに関する技術、ノウハウが活かされています。特に、使用する超高輝度LED素子の性能を十分に引き出すため、基板素材、パッケージ形状にこだわるだけでなく、自社による光反射技術を駆使し、光を効率よく前面に放射できる光学設計を実現させました

また、照射面をムラなくするため、LEDパッケージの配置などに工夫をこらすことで均一性をアップ、蛍光灯による栽培でありがちな育成速度のムラによる栽培品のロスを低減させる効果が期待できます*7。
 
■導入、設置が容易
LEDバー照明は、AC100V入力なので、家庭用電源コンセントにプラグを差し込むだけで使用可能、複雑な電源コントロールや、電源用の大きなスペースなどを一切必要としません。また、設置に際しても、簡単な工具で取りつけができる設計になっています。
 
■長寿命、環境負荷低減
このLEDバー照明は、標準で4〜6台を1ユニットとします。この1ユニットを栽培棚に設置した場合、140〜170μmol・m-2・s-1の光量を照射することができます。さらに、バーの台数を増やすだけで、容易に光量のアップが可能であることから、栽培可能な品目を拡げることができます。
 
昨今の食に対する安全意識の高まりや、食物自給率向上のニーズを追い風に普及が見込まれる植物工場において、植物育成に必要とされる最適な光を自由にコントロールできるLED照明は、今後のキーとなるアイテムといっても過言ではありません。

なかでもLEDバー照明は、葉物野菜を効率的に生産する植物工場に最適の光源で、葉物野菜のほとんどをカバーする能力を持っています。ウシオライティングは、本製品を足がかりとして、植物育成用途のさまざまな照明について開発を進めるとともに販売も強化し、LEDビジネスにおける1つの核として成長させます。
 
 
*1:「PPFD(光合成有効光量子束密度)」
1秒あたり、1平方メートルあたりの400〜700 nm領域における光子の数。植物工場で栽培されることが多い葉物野菜は、一般的に150〜200μmol・m-2・s-1前後の光量子が1日12時間程度必要であると言われている
*2:本LEDバー照明6台を1ユニットとして使用した場合の、20cm直下でPPFD値(当社調べ)
*3:蛍光灯6台と当社製LEDバー照明ユニット6台での栽培実験結果(当社調べ)
*4:植物の育成条件、育成方法や環境条件、植物の種類によって、結果が異なる場合があります
*5:蛍光灯とLEDバー照明のPPFD値比較シミュレーション
植物工場で一般的に使用される蛍光灯とLEDバー照明を比較した場合、植物育成に有効な波長のPPFD値について、当社シミュレーションによると、LED バー照明は蛍光灯の約70%相当で育成が可能であることから、蛍光灯6本とLEDバー照明4台がほぼ同等となる(当社調べ)
*6:当社調べ
*7:参考資料

 
 
============2010年11月1日の記事============
ウシオライティング昭和電工は素子や周辺部品を改良し、稲を成長させられる強い光を作り出す発光ダイオード(LED)照明の開発に成功した、という。一般的なレタス等の葉野菜は丈も短く、近接照射が可能であり比較的、光量が少なくても栽培することができたが、果実類(トマトやイチゴ)、さらには穀物類となると強い光量が求められ、今回のものが商品化できれば、稲を育てられるLEDとしては初めてとなる。
 
 
開発したLED照明は植物の光合成を促す赤色のLEDと、植物の組織を形作る青色のLEDを1メートル四方に約2500個並べた。稲や小麦などが育つよう、葉物が育つ従来品の10倍に光の強度を引き上げた。植物工場の研究に取り組む千葉大学大学院の後藤英司教授が、開発したLED照明を使って栽培実験を近く始める予定である。あらかじめ2カ月半育てた稲を1メートル四方に120本植えて栽培し、LEDを使用することで栽培期間を太陽光より1カ月ほど短くできるとみている。<日本経済新聞より>