白鶴酒造の農業法人白鶴ファーム株式会社は、今年度の酒米生産において、ICTを活用したスマート農業の実証実験を行う。具体的には農業用ドローンの活用や、圃場にセンサーを設置し、水温・水位のデータを自動取得を行う。
日本の農業は人手に頼る作業が多く、豊富な経験が必要とされており、農家の高齢化や担い手不足が課題となっています。特に、水稲栽培農家の平均年齢は70 歳近くと高齢化が進み、栽培条件が厳しい酒造好適米の生産は敬遠されがちになっています。
白鶴ファームでは、そのような問題を明確化し、改善していくことで、今後の安定した原料の調達を可能にするとともに、環境(圃場)の維持や雇用の創出につなげていきたいと考えています。
現在白鶴ファームでは、白鶴酒造からの出向社員と、冬場は櫻酒造(白鶴酒造の関連会社)で酒造りをしている酒蔵の季節従業員が農業に従事し、丹波篠山に点在する33haの農地で「白鶴錦」や「五百万石」などの酒米を生産しています。
今回、そのうちの15ha(白鶴錦11ha、五百万石4ha)で実証実験を行い、酒米の生産において新たな技術を活用し、農作業の効率化、省力化、高品質酒米の収量増を目指します。
■実証実験の内容
① 農業用ドローンの活用
近年の研究成果により、もともと安全性に配慮されている農薬を、ドローンを使用することでより効率的に散布することが可能となり、一回の散布で病虫害の発生を抑制することができます。
それにより、刈取り前に追加散布などを行う必要が無くなり、残留農薬の不安も解消されます。
白鶴ファームでは、酒米の出穂前にいもち病の防除とカメムシなどの害虫予防のためドローンで薬剤散布を実施します。従来に比べ、所要時間を約1/3 に短縮することが可能になります。
さらに、これまでは薬剤を入れた動力散布機(総重量約30kg)を炎天下に人が背負って畦(あぜ)を歩きながら撒いていたことから、人的負担も大幅に軽減されます。
また、ドローンではこれまでの粒剤に代わり液剤を散布するので、圃場に水を張らずに散布ができ、稲の上約30㎝から圃場全体に均一に散布するため、効果にムラが発生しません。
作業の効率化により、今後は酒米の品質に関わる作業をさらに充実させていきます。取り組みの一環として、8月24日に、自社開発酒米「白鶴錦」の圃場に農業用ドローンによる農薬散布を実施しました。
② 圃場水温・水位データ取得
圃場にセンサーを設置し、水温・水位のデータを自動取得します。収穫後は、データと品質や収量との相関関係を調査します。
■農業法人白鶴ファーム株式会社
自社栽培による安定した良質の酒米の確保と、季節変動の大きい酒造業の雇用の安定化、圃場を維持確保することでの農業への貢献を目的として、2015年2月に兵庫県丹波篠山市に設立。農地5haからはじまり、現在は33haで白鶴錦や五百万石などの酒米を生産する。
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