東北大、埼玉県越谷市とイチゴ栽培に関する共同研究。プラズマ照射による無農薬栽培の実現へ

 東北大学大学院工学研究科と埼玉県越谷市は、安全・安心で高品質なイチゴの生産と収穫の増加を目指し共同研究を開始する。

現在、世界的に食の安全性が強く求められており、農作物栽培時の農薬散布および収穫後のカビ防止剤等の生体に対する影響が懸念されています。

そのような観点から「農薬不使用栽培」や「化学薬品不使用ポストハーベスト」が注目を集めています。

さらに、消費者の健康志向の高まりを反映して、ビタミンやポリフェノール等の機能性成分が多く含まれる食品の需要が高まっており、農作物生産において農作物中の機能性成分量を向上させることが大きな課題となってきています。

つまり、安全で新鮮かつ体に良くて美味しい農作物を低コストで栽培する技術が社会的に求められています。


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東北大学大学院工学研究科の金子俊郎教授らのグループでは、これまで農薬を使わずに病原菌を死滅、あるいはその活動を停止させ、さらに農作物の機能性成分を向上させる栽培技術が必要であると考え、「大気圧プラズマ中に存在する活性種」を植物体に照射し、細胞レベルで作用させる水導入大気圧プラズマ装置を開発してきました。

この水導入大気圧プラズマ装置の特徴は、プラズマ生成の原料が空気と水蒸気のみであるために農薬のような高分子化学物質が発生せず、また水蒸気濃度を格段に高めることで殺菌や機能性成分向上に作用する「水酸基ラジカル(OH)」や「過酸化亜硝酸(HOONO)」等の活性種を極めて高濃度に生成することができます。


下図に示すように育成前(種子:免疫活性向上)、育成中(葉、茎:病気予防、苗:成長促進)、育成後(果実:鮮度保持、機能性成分制御)の栽培全期間に於いて、本水導入大気圧プラズマ装置により発生する高密度の短寿命活性種を照射することで、その効果を農薬や化学薬品に代わって作用させ、農薬不使用栽培を目指します。

東北大、埼玉県越谷市とイチゴ栽培に関する共同研究。プラズマ照射による無農薬栽培の実現へ
実際に、2014年から宮城県山元町において実証試験を開始し、植物体への影響と病気の発生割合を調べた結果、炭そ病や灰カビ病等の発生抑制が確認できています。

今回、この水導入大気圧プラズマ照射装置を、埼玉県越谷市の農業技術センターの大型イチゴ圃場で民間企業3社の協力を得て、実証実験を開始することとなりました。


【共同研究における役割】
東北大学)
 ・プラズマ照射装置の設計・製作と高性能化の開発
 ・プラズマ照射装置の設置及び作業の総合管理
 ・イチゴの試験栽培及びプラズマ照射作業に関するデータ集積及び解析

越谷市)
 ・総合試験温室及び高設ベンチ型イチゴ栽培設備等の提供
 ・イチゴの試験栽培及びプラズマ照射作業
 ・イチゴの生育状況の確認及び比較データの収集
 ・栽培用の原水、液肥、廃液等の養液を含めセンターで可能な分析の実施
 ・プラズマを照射したイチゴと照射しないイチゴの総合比較