米国メリーランド州・ボルチモアを拠点とする技術系スタートアップ・ベンチャーCykloburn Technologies社は、養鶏施設から出る廃棄物を活用したバイオマス発電の研究施設を開設し、大規模実証をスタートする。
コアとなる技術シーズは、モーガン州立大学からライセンスを受けており、同社では大学とのライセンス契約を締結した後、アメリカ国立科学財団(NSF)の中小企業向けイノベーション研究補助金(フェーズ1)として、22.5万ドル(約2,500万円)を受けた。
養鶏施設からの環境汚染に悩むメリーランド州
ワシントンDCに隣接するメリーランド州は、大西洋岸に位置する。バイオテクノロジー企業も集約する地域の一つで、ハイテク農業系ベンチャーも多い。
そして、養鶏施設も集中している州内エリアでは、リン・窒素などが過剰に含まれた廃棄物が、チェサピーク湾へ流出する、といった環境問題も深刻化している。
同社が開発したバイオマス発電システムでは、環境負荷の軽減といった社会貢献だけでなく、養鶏農家への直接的な支援にもつながる。
細かい技術システムは明らかにされていないが、廃棄物から熱と電気を生み出し(コージェネレーション)、生産施設内の暖房への利用や売電も可能となる。
例えば、太陽光利用型植物工場を運営するオランダ農家は、地熱を利用した発電システムにて、生産施設内を温めるだけでなく、売電も行っている場合が多い。
利益の半分以上が売電によることもあり、植物工場を運営する際の新たな収益源の一つとして貢献していることから、投資額との費用対効果や自治体からの支援があれば、米国の養鶏農家も同じような形で普及する可能性があるだろう。
政府や州、投資家からも注目
大学の技術シーズを活用して2017年に設立し、現状ではホームページも開設されていないCykloburn Technologies社ではあるが、アメリカ国立科学財団(NSF)の他、スタートアップ起業家を支援する団体TEDCO「メリーランド州イノベーション・イニシアティブ」から、約15万ドル(約1,700万円)の支援も受けている。
さらに、州の支援プログラムからも1,000万円以上を確保しており、太陽光発電やバイオマスといった再生可能エネルギーを活用するクリーンテクノロジー(clean technology)ということもあり、同社の技術について注目度は非常に高い。今後、注目ベンチャーの一つである。