以前の調査レポートでも、植物工場では、栽培技術や自動化を進めていく他、播種から収穫・集荷までの生産工程管理技術の重要性についても記載したが、以下ではユリの生産のために巨大ハウスを運営するエフ・エフ・ヒライデ、農作物の生産・加工などを行う農業法人のグリンリーフなどに関する記事を掲載しておく。
エフ・エフ・ヒライデは、宇都宮市の郊外に総面積1万5000平方メートルほどの巨大な温室ハウスを運営・ユリを生産している。球根植え付け数は全国でもトップ級で、年間120万球に達する。温室の中には、摘み取ったユリを入れる大きな容器や道具類を台車に乗せてスムーズに動かすため、レールが敷き詰められている。常に自分の近くに容器を動かしながら、摘み取ることができる。同社・社長によると「作業員の歩く距離を可能な限り減らしたかった」からこの仕組みを考案した、という。
このように、作業員の歩数を減らすことは、現場から無駄な動きをなくす効果があり、作業時間の短縮や省力化につながる。主に製造業の生産現場で導入されている「カイゼン」手法の一つだが、これまで農業で活用している例はほとんどなかった。コスト削減策はそれだけではない。包装用段ボールを少しでも安く入手するため、隣県の業者に声をかけて入札を実施。自ら貿易業務を学び、オランダから球根の直輸入を始めた。また、コストの上昇要因になりかねないと判断し、JAからも離れている。
1億円以上する温室をいくつも建設しているが、補助金には頼らない。「利益を上げているという経営実態ときちんとした事業計画を示せば、銀行は資金を貸してくれる」(同)。旧来のイメージとは違う農業経営者の姿がここにある。
もう1社の農業法人のグリンリーフは10年末、自動車部品メーカーのOBを雇い入れた。グループ会社が生産した野菜などの加工工場の作業を見直すためだ。漬物やこんにゃく、冷凍野菜などの商品の生産工程を一つずつ詳細に分析し、作業の無駄を洗い出している。同社・社長によると「経営効率化の点では農業以外の業界から学ぶことの方が多い」と話す。
この他にも、市場価格の変動に左右されない経営システムを作る動きも出ており、コマツナやルッコラを生産するアクト農場(茨城県茨城町)の関治男社長の経営方針は「確実に売れるものしか作らない」。生産物の大半を野菜の通販会社や外食向けの卸会社などに販売。取引先とは事前に年間を通じて一定の販売価格を設定する。サイズや品質、肥料や農薬の設定など取引先の細かい要望に応えなければならないが、市場価格より高値で安定した取引ができる。このように、栽培技術の研究開発とともに、農業経営全体を見直し、改善しようとする事例が増えており、非常に参考になるだろう。<参考:日本経済新聞より>
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