製造業を中心に、工場内の遊休地を「植物工場」に転用する事例が増えているが、以下には参考として「プレジデントの記事」を一部、掲載する。
製造業が植物工場へ参入する理由は以下のようなもの。これまで効率化の面では後れをとっていた農業分野に対して「均質な製品を効率良く計画的に生産するノウハウ」を活用できること。さらにビジネス環境の変化により、土地は「買う」ものから「借りる」ものに変化しており、国内事業縮小などで生まれた遊休地を転売することが難しくなっていること。こうした理由が参入企業を増加させているようだ。
確かにその通りであり、中国やアジアへの拠点移動により国内工場の縮小・削減された自動車・半導体工場など、当法人への相談も多い。簡易的な植物工場であれば、1カ月程度で設置することもでき、工事の間の1カ月間で研修を受ければ誰でも管理ができ、余剰人員の活用も容易である。
ただし、日々の作業ができるだけで、品質・生産性の向上に貢献できる人材ではない点に注意が必要である。
また参入企業の多くが経営的に厳しいことも間違いない。特に販売先の開拓で苦戦を強いられる企業も多く、植物工場単体で収益を上げるのは厳しいのが現状のようだ。現在黒字の工場も、黒字転換までに10年前後かかっている。いま導入すると、黒字化に7?8年はかかるだろうとのこと。
当法人の調査でも同様であり、過去の事例から判断すると、初期投資額の半分を補助された工場でも収支均衡・若干の黒字化を6?7年以内に達成できれば、成功企業に分類されるだろう。さらに完全閉鎖・人工光型による葉野菜を中心とした生産・販売事業に関していうと、大規模施設を稼働させている企業が百貨店やホテルだけでなく、地方の小さなスーパーにまで販路を拡大させており、今後の新規参入企業は販路開拓で苦戦することは間違いない。
ただし、外食・中食分野への販路拡大の余地はある。記事によると、バイヤー約80社を対象にした調査では、スーパーなどではそれほど関心が高くなかったのに対し、外食・中食産業では、「いまは使っていないが機会があれば使いたい」との回答が2割以上に上った、という。
大手スーパー・百貨店へ独自に調査した際にも、多様なニーズに対応するために1?2社の工場野菜を採用していく考えの企業が多かった。特に、配送のタイムリーさをメリットの一つとして考えており、発注した翌日には新鮮な野菜が配送されることから、大量に仕入れるのではなく、販売量に合わせながら、小ロットを継続的(毎日)に注文しようとする店も多い。
よって、工場野菜を販売している店に対して、新たに追加の別ブランドを仕入れてもらうのには苦労するだろう。今後はいかに外食・中食産業に対して、販路を拡大していくのかが、新規参入の成功ポイントかもしれない。
詳細は、調査レポート:植物工場ビジネスの将来性『植物工場の6割赤字/収支均衡3割の現状を打破するためには』 にも掲載しておりますので、参考にして頂ければ幸いです。