茶の栽培や卸売りを手掛ける株式会社野口徳太郎商店は赤・青色を混ぜた発光ダイオードLED光源を採用した噴霧式の植物工場で茶を栽培する事業を始める。成長を早める装置を活用し、通年で収穫できるようにすることでコストも抑える。農薬を使わないことで安全性もアピールできると見ており、3年後をメドに量産を始める計画である。
センサーを扱う企業と栽培装置を共同開発し、自社敷地内に実験施設を設けた。装置は発泡スチロールの板に複数の穴をあけ、茶の苗を並べて挿して固定する。苗には赤色と青色を混ぜた発光ダイオードLED照明をあて続ける。板の下へ伸びた根には、自動装置を使って液体肥料を定期的に霧状に吹き付ける。施設では最も良好に生育するための条件や適した品種などを調べる。これに先立ち、埼玉県内の研究施設などで行った実験では、通常の露地栽培に比べて成長が約6倍速くなることを確認したという。
これにより通常は年3〜4回の収穫を、10回以上に増やせる見通し。施設整備費や電気代などのコストはかかるが、収穫頻度が高まることで「茶葉の販売価格は通常品とほぼ同程度になる見通し」としている。今後は栽培技術の確立と並行して、茶の葉や花、種子、根を余すことなく活用した料理や調味料、機能性食品などの開発を進め、付加価値を高める。消費者の健康志向も追い風に「茶を飲むだけでなく、食べるなどの楽しみ方も提案する」
茶葉を使った料理を本社に併設している日本茶カフェで提供するほか、茶葉を料理に添えるツマとして出荷することも検討する。境町などでは茨城県特産の「さしま茶」を生産している。原発事故による風評被害が残るなど環境は厳しいが、植物工場では農薬を使わない安全性も強みに、海外への輸出などにも積極的に取り組みたい考えだ。(2013年3月29日 日本経済新聞より)
Editor's Picks
-
田んぼに浮かぶホテルがコンセプト、スイデンテラスがリニューアルオープン
-
緑演舎による造園家がプロデュースする個人住宅向け「GARDENNERS HOUSE」事業をスタート
-
ミラノ都市部で自然に囲まれたオフィス空間を実現。ハイテク企業や研究者のハブ施設へリニューアル
-
シンガポールの高層住宅タワーをリニューアル。屋上には住民参加型の菜園も整備
-
メルボルンに駐車場スペースを活用した屋上農園「スカイファーム」が来年に完成
-
台湾の青果市場、屋上に農場を導入した最新施設として2020年に完成予定
-
ロンドン、屋上に植物工場ファームを併設した地元フードコート施設を開設
-
UAEの陸上養殖ベンチャー『Fish Farm社』サーモンなどの魚を本格販売へ
-
カナダの大学が連携。クリーン・エネルギー技術を活用した『高層タワー型の植物工場』を計画
-
海面上昇の対策、海洋に浮かぶ街「フローティング・シティ」食料やエネルギーの自給自足を実現