産業用ガス事業の停滞。新たな収益源として農業事業に乗り出す(カゴメからトマト・エスビーからリーフレタスの栽培委託):エア・ウォーター

産業用ガス大手で農業参入したエア・ウォーターが安曇野市の第3セクターである安曇野菜園のトマト栽培事業を、2011年4月1日付で譲受する。安曇野菜園は販売先に苦戦し継続的な赤字に陥っていた。グループのエア・ウォーター農園(太田房江社長)の第2の栽培拠点として、農業事業を展開していく。譲受額は約4億6千万円
 
 
同農園の太田房江社長(元大阪府知事)は記者会見で、初年度4億円の売り上げを計画し、2014年3月期に期間損益の黒字化、16年3月期には累積損失の解消を目指す事業計画を明らかにした。同農園は、今後10年間の契約で安曇野市の指定管理者として運営にあたるパートを含む105人の従業員は引き続き雇用し、カゴメのブランドで販売されるトマトの生産を続ける。生産性向上のために1億円の追加投資をするという。 また、10年間の契約終了後の関わり方については、市が所有している栽培施設を買い取る考えがあることを明らかにした。
 
 
エア・ウォーター農園は、2009年末に設立された農業生産法人。千歳市でベビーリーフの栽培を手がけ、昨秋から出荷を開始した。トマト栽培を本格的に開始することで、農業の新たなビジネスモデルを構築するとともに、生産性向上を目指した投資も積極化し事業拡大を図る。トマト菜園の敷地面積は10万1770平方メートルで、栽培用のガラスハウスの面積は5万2650平方メートル。トマトは約12万本栽培しており、従業員は約100人。今後、約1億円を投じて細霧冷房装置や炭酸ガス供給装置を導入。3年後には黒字化し5年目に累積損失を解消する計画である。<2011年2月18日>
 
 

産業用ガス大手で農業参入したエア・ウォーターが、事業計画と目標数値を発表したので、補足情報として記載しておく。北海道千歳市釜加の農園での野菜生産の事業計画について、年内にベビーリーフとリーフレタス、来年4月からトマトの生産を開始し、大手食品メーカーのカゴメや道内卸に供給するほか、地元農家と共同で千歳産農産物のブランド化や販路拡大にも取り組む計画。
 
道内農業を成長分野と位置づけた事業多角化の一環で、運営主体は同社が昨年11月に設立した農業生産法人エア・ウォーター農園(札幌)。自己破産した農業生産法人がトマトを栽培していた約7ヘクタールの温室(オランダ製ビニールハウスを採用)を取得し、3月からトマトなどの試験栽培をしている土壌に作付けするベビーリーフを除き、すべて水耕栽培。カゴメからトマト、エスビー食品からベビーリーフの栽培委託を受けるほか、自社ブランド品を生産。年間生産量はトマト約千トン、ベビーリーフ34トン、リーフレタス20トンで2012年度に売上高4億円を目指す。

 
北海道で産業用ガス販売や食肉加工などを手掛けるエア・ウォーター(株)は、国内製造業の海外移転が進み、主力の産業用ガス事業の成長が期待薄だと考え、新たな収益源に農業を選択した。もともと自社が事業展開する地域は北海道であり、比較的安く広大な土地を確保できる。そこで農業生産法人「エア・ウォーター農園」を設立し、北海道千歳市に約20万平方メートルの農地を取得
 
 
取得した農地内にはカゴメとエスビー食品から栽培技術のライセンスを受け、約5億円を投じて、トマトやベビーリーフを生産する植物工場を建設。2010年10月頃に栽培を開始する計画だという。残りの農地には露地栽培による飼料用トウモロコシなどを生産する予定。2012年度に4億円の売上高を目指す。生産した野菜の販路は、技術ライセンスを受けたカゴメとエスビー食品の2社に供給する計画。
 
 
同社にとって農業は既存事業から縁遠く見えるが、実は同社にとって相乗効果を出せる分野は多い。1つはハウス内の二酸化炭素(CO2)ガス濃度を空気中の2倍程度に高め、野菜の生育を促進する技術。日本では農業にCO2ガスを活用する手法はさほど定着していないが、自社での実績を通じて農業向け販売の拡大につなげる戦略を描いている。ほかにも、ガス事業から派生した低温物流のノウハウは農産物の物流に応用できる。製塩を手掛ける子会社はミネラル製品を栽培用の溶液に添加する肥料として生かせるように開発を進めている。農業廃材を使ったバイオガスプラントの研究と連携させる計画もあるという。
 
 
ここ最近、ガスや水道、鉄道といったインフラ関連企業における農業事業への参入が増えつつある。既存の事業からの売上拡大が見込めないと判断し、危機感を持った企業が新規事業として最初に考えるのが農業だろう。(参考記事:北九州にあるエスジーグリーンハウスの例。西部ガスの子会社)
 
 
こうした企業は、地場での安定した事業を通して比較的、資金も保有しており、遊休地などの使用されなくなった広大な土地を持っていることが多い。そして成功のポイントは、どの栽培技術を保有している企業と提携するのかが重要である。本件のエア・ウォーター(株)の場合、カゴメは独自の植物工場栽培技術を保有しており、エスビー食品とともに食品加工の分野でも強い企業である。こうした植物工場などの栽培技術に加えて、生産した野菜を買い取ってくれる食品加工会社の存在は有難い
 
 
もちろん、カゴメやエスビー食品側もメリットがある。植物工場などハイテク農業にて生産することで年中安定的に、高品質野菜を確保できる。こうした技術を活用した農業では、どの野菜も形、味、栄養価などが同じ野菜を生産することも可能である。また自社の技術ノウハウを提供し、栽培指導することで、自社が要求する野菜をそっくりそのまま生産してくれるのも有難いだろう。各社にとって、求める野菜の形・品質・栄養価などは異なるだろうし、こうした要求通りの野菜を安定的に供給してくれることは、技術を供与する側もプラスである。
 

 
 

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植物工場・農業ビジネス編集部

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