京大など、ヨルダンの乾燥地域で洪水を灌漑用水へ

 京都大学・宇波耕一 農学研究科准教授、Osama Mohawesh ムタ大学(ヨルダン)教授の国際研究グループは、ヨルダンの乾燥地域において洪水を灌漑用水に変えるシステムのプロトタイプを構築し、貯水池の運用を開始した。

京大など、ヨルダンの乾燥地域で洪水を灌漑用水へ
■研究者からのコメント
海外の過酷な環境に研究目的の農業水利施設を構築する試みはこれまでにもありましたが、その運用戦略について厳密な数学的方法論に基づいた検討を行った例としては本研究が初めてになります。

このような農業工学と数学の異分野協働により、経験値の合理性の解明や、過酷な環境条件下での水資源開発手法の体系化が、一層進んでいくことが期待されます。

また、継続中の実証研究では、ナツメヤシが順調に生育しており、研究の新たな展開と併せて大変楽しみな状況です。


■概要
中東や北アフリカをはじめ世界全体に広く分布する乾燥地域においては、外来河川や化石地下水への過度の依存や塩類集積といった問題が顕在化し、過酷な環境の中で限定的な水資源を有効利用する灌漑農業を確立することが喫緊の課題となっています。

同時に、このような乾燥地における突発的洪水による被害が拡大していると言われています。そのため、これらに対処するための灌漑システムが求められていました。


本研究グループは、砂漠の洪水を収集して貯水池に蓄え灌漑用水に変換するシステムを提案し、そのプロトタイプをヨルダンの乾燥地域に実際に構築しました。このプロトタイプは、水理学や水文学、とくに数値流体力学の知見に基づいて設計、施工を行いました。

水資源利用工学と解析学の学際的研究の成果として、厳しい環境下での水資源開発において、本プロトタイプが実現可能な選択肢であることを確認しました。

特に、ある種の偏微分方程式に対する「粘性解」の概念を用いることにより、ポンプの運転/停止切り替えのような滑らかでない最適運用戦略を取り扱うことが可能となりました。