藻類からバイオマス燃料を作る技術が世界で注目を集めている。藻類が生む油は量が多く、ガソリンやジェット燃料に容易に転換でき、世界を救う “緑の燃料” となり得ると考えられている。信州大学農学部で研究を進める伊原正喜助教のインタビューコメントを以下に掲載する。 まず藻類の油とは何か。伊原さんは「彼らにとっては排泄物のようなもの」と言う。多くの藻類は水とCO2を使って光合成を行う。すると酸素と一緒に、油や水素、アルコールなどを外に出す。これが燃料になるというのだ。利点はまず、食糧と競合しないこと。さらに、例えばトウモロコシに比べて計算上は100倍以上になるオイル生産能力の高さ。そして、CO2を吸収するため、地球温暖化の解決にも貢献できる。 メディア等でも多数、紹介されている筑波大学の研究チームが発見した「オーランチオキトリウム」という藻は、増殖速度が速く、これまでより油の生産効率が12倍にもなる。この藻を連続生産すれば、霞ケ浦(2万ヘクタール)程度の広さで国内石油必要量(約2億トン)が賄え、石油の輸入国から産油国に転換できるという試算もある。 夢は膨らむが、当然課題も山積みだ。「実際は油の収量はまだ低い」と伊原さん。藻の純粋培養は難しく、すぐに異物が混じってしまう。理論値よりも油の生産効率は下がり、コストも原油に勝てるレベルには達していない。また、藻が油を生むメカニズムも完全には解明されていない。伊原さんは「(富栄養の)培養状態だと、なぜか油の量が少ない。低栄養状態で油を生む仕組みになっているようだ」。大量生産に向けたハードルは高いままだ。 それでも、企業の参入は相次ぐ。米国では新エネルギーの覇権を狙う米政府の補助を受けて、ベンチャー企業によるデモ段階の大型プロジェクトが進行中。石油メジャーも独自に研究を進める。日本は実験段階の研究が多いが、昨年7月には株式会社IHIが4億円を投じて会社を立ち上げた。現在、藻類バイオ燃料の主流は油だ。だが、伊原さんはさらに先を見据え、水素への変換が容易な“蟻酸”を産出する藻を遺伝子操作で作ろうとしている。将来、燃料電池などが普及した“水素経済社会”で、基軸になるとみられているエネルギー物質だ。 「可能性はあるが、これだけで世界を救えるものじゃないと思う」と、伊原さんは藻類について語る。「でも、原発事故が起きてから開発を急ぐ必要性が生まれた」。ポスト原油、原発の新エネルギーは果たして藻類なのか。未来への模索が続いている。<参考:長野日報より> ]]>
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