パナソニック、自動環境制御・次世代閉鎖型牛舎システムを本格導入。暑熱期の搾乳量減少抑制に効果

 パナソニック環境エンジニアリング株式会社は、牛舎の壁面に給気用と排気用の換気扇を配置し、牛舎を横断するように換気する「次世代閉鎖型牛舎システム」を本格導入する。
畜産業界は、飼料価格の高騰、悪臭、家畜感染症や、高齢化、離農による後継者不足などさまざまな課題に直面しており、中でも、暑熱期における搾乳量減少や受胎率の低下は経営を圧迫する要因となっている。
パナソニック、自動環境制御・次世代閉鎖型牛舎システムを本格導入。暑熱期の搾乳量減少抑制に効果
従来の牛舎は、天井に換気扇を設置し、順送りに送風する「開放型牛舎」が主流です。しかし、開放型牛舎では換気扇台数、配置、送風量が適切でないことにより、換気が十分に実施されず温度ムラの発生、アンモニアガスの滞留といった問題が発生しがちです。
これらの問題や特に夏季における牛への暑さを防ぐことができず、牛がストレスを感じることで搾乳量が減少します。

本システムは、牛舎の壁面に給気用と排気用の換気扇を配置し、牛舎内の環境計測用センサを使用して換気扇を自動制御。舎内温度・湿度・風速を均一に保ち、最適な飼養環境を実現します。

1.舎内環境:シミュレーション技術を活用し換気扇を最適配置(台数、設置場所)。牛舎内全体を均一な風速で換気し、牛にとって最適な環境を実現。
2.バイオセキュリティ:牛舎内全体換気によりサシバエ・アブ等の侵入、活動を抑制。閉鎖型のため野鳥の侵入抑制も可能。
3.臭気:常時全体換気を行うことにより、アンモニアガスの滞留を抑制。

同社は、宇都宮大学を代表機関としたコンソーシアムに参加し、2014年度、2015年度にわたって、栃木県大田原市の「有限会社 グリーンハートティーアンドケイ」の協力のもと実証研究事業(『攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業』)に携わり、本システムによる暑熱期の搾乳量の増加、種付け回数の低下という結果を得ました。

■実証研究事業の内容
【事業名】
農研機構生研センターの「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立)」

【実証研究名】
次世代閉鎖型搾乳牛舎における省力・精密飼養環境制御、バイオセキュリティ向上技術の実証

【検証方法】
既設の開放型牛舎を対照区として、閉鎖型牛舎で約80頭を比較検証

【検証結果】
・暑熱期(7~10月)の期待乳量において7kg/dayの差が認められた。
(泌乳量が平均30kg/day・頭のため10%以上の改善となる)
・呼吸数は夏季において閉鎖型牛舎のほうが約8回/分の減少が認められた。暑熱ストレスが軽減されたと推察される。
・シミュレーション技術を活用した換気扇の最適配置により、舎内気流速(2m/s以上)を実現。気流速によりサシバエ等侵入、行動抑制、体感温度の低下が得られたと推察される。
・夏季における種付け回数が1回減少した。

▼パナソニックのソリューション「次世代型畜舎システム」
http://www2.panasonic.biz/es/solution/theme/agri/cattle_shed/index.html