キウイ・パイナップルにおける害虫から身を守る仕組みを解明

 農業生物資源研究所では、キウイフルーツやパイナップルが害虫から身を守る仕組みを解明した。植物全体にシュウ酸カルシウムの針状の結晶とたんぱく質分解酵素の両方を含むと、高い殺虫効果を見せた。害虫に強い作物や農薬の開発につながる。

キウイやパイナップルには針状結晶のほかに、虫を殺すシステインプロテアーゼというたんぱく質分解酵素も含まれている。両方の物質を同時に葉に塗ってガの幼虫に食べさせたところ、1日後に9割弱が死亡した。針状結晶だけでは死なず、プロテアーゼだけの場合も最大約25%が死んだだけだった。

キウイ・パイナップルにおける害虫から身を守る仕組みを解明

概要
・キウイフルーツ、パイナップル、サトイモ、ヤマノイモ、ブドウ、アロエ、ホウセンカ、ランなどの多くの植物には、「シュウ酸カルシウム」の針状結晶が多量に含まれており、このシュウ酸カルシウム針状結晶が害虫の食害から植物を守る働きがあると考えられてきました。

一方、タンパク質酵素の一種であるシステインプロテアーゼも害虫の食害を防ぐ働きがあり、こうした酵素を多量に含む作物は耐虫性を持つことが知られています。キウイフルーツやパイナップルは非常に強い耐虫性を持つことが知られていますが、これら作物には針状結晶とシステインプロテアーゼの両方が含まれていることから、これら両者の共存により耐虫性が増しているのではないかと推測されていました。

・独立行政法人農業生物資源研究所(生物研)は、シュウ酸カルシウム針状結晶と耐虫物質であるシステインプロテアーゼを同時に葉に塗布して昆虫に与えると、相乗作用により極めて強い殺虫効果を示すことを発見しました。

・シュウ酸カルシウムの砂状の結晶では、システインプロテアーゼとの相乗的な殺虫効果は全く認められませんでした。針状結晶は昆虫の細胞や組織に穴を開けシステインプロテアーゼの体内・細胞内への侵入を容易にすること(針効果)により、殺虫性が示されたものと考えられます。

・本研究により、シュウ酸カルシウム針状結晶をもつキウイフルーツ、パイナップル、ブドウ、サトイモ、ヤマノイモ、バナナ、ココヤシなどの食用植物やラン、アマリリス、アロエ、インパチェンス、ベゴニア、シュロ、ポトス、アジサイなどの観賞用植物の耐虫性を理解する上で重要な知見が得られました。今後、本研究が、サトイモ、ブドウなどの作物におけるシステインプロテアーゼの発現量が多い系統の選抜を通じた耐虫性作物の育成など、害虫による作物の被害を防ぐ新技術の開発につながることが期待されます。