ラオスにて活動する合同会社GPLAO JAPAN(現地法人:GPLAO pakse sole co.,ltd)は独自のフェアトレードにより農家から適正価格での豆の購入や、栽培から販売までを見える化し品質を保証する「SAMURAI PROJECT(サムライプロジェクト)」を展開しており、プロジェクト初となる日本国内へのコーヒー豆の輸入を実施した。
最高級の品種ながら栽培の難しさにより流通が少なく希少価値の高いティピカ種の豆18トンを輸入し、推し進める独自フェアトレードの完結に向け販売店・取扱店の募集を開始しました。
1.プロジェクトの背景
2017年より自然農法栽培を伝える目的で農業支援活動に取り組んでおり、2018年1月に「GPLAO pakse sole co.,ltd」を設立。その年6月に無料で学べる農業学校を開校しました。この開校をラオスメディアに取り上げていただき、テレビニュースとして連日流れ、新聞にも掲載されました。
これを見たラオスコーヒー協会会長より相談があり、ラオス産のコーヒーは、味は良いが豆としての評価が悪いため高く売れず、農家の所得が少ないという事情や問題を知ることとなります。そこで栽培から加工まで細部に至るまで変更するため、JAPANクオリティを伝え始めプロジェクトを発足しました。
2.プロジェクトの目的
・コーヒー農家の適正所得の安定化
・生産者、販売者、消費者のすべてが利益を公平に分かち合う仕組みを構築する
・良質なコーヒー豆を生産し、一年を通して継続して流通させる
3.プロジェクトの内容
独自の流通網により栽培から販売までを自社で賄い、高い品質管理と安定・継続した流通を目指す。
(GPLAOの取り組み:http://gplao.com/works/)
SAMURAI PROJECTの流通網
一般的なコーヒー豆の流通網は、①生産者 ⇒ ②加工会社 ⇒ ③買付業者 ⇒ ④輸出業者 ⇒ ⑤輸入業者 ⇒ ⑥卸売業者 ⇒ ⑦焙煎業者 ⇒ ⑧小売業者 ⇒ ⑨消費者となっており、生産者から消費者に渡るまでに多くの仲介を経由するため生産者が得られる収入は消費者が支払う金額の1割にも満たず、農家の所得が低い大きな要因となっています。
SAMURAI PROJECTでは、生産から輸出をGPLAOが管理(日本への輸入は合同会社GPLAO JAPANが行う)することで、適正価格での豆の売買と徹底した品質管理を可能としています。
GPLAO社は現地の農家と契約しており、契約農家は500軒以上。現在も増え続けています。契約農家は一切の化学薬品、化学肥料を使用せずに土壌作りを行い、農薬、消毒は行わず、収穫から加工までを指定場所にて行っています。
ブロックチェーントレーサビリティを導入することにより、生産から輸入・販売までのすべての工程において誰が関わりチェックをしたのかを明確にでき、プロジェクトの基準をクリアした高い品質であることを証明することが可能となります。
作られた豆は市場価格に左右されることなく毎年GPLAO社が買取りを行い、契約農家から直接買い取ることによりフェアトレード(適切価格での取引)が可能となり、農家の適正所得の安定化に繋がります。
売上の一部から農家へコーヒー豆(ティピカ)の苗木を寄付
さらなる農地拡大、生産量向上に向け、コーヒー豆の売上の一部から苗木の寄付を行っています。これにより農家の所得向上、雇用創出といったラオス農家の貧困問題の解決に加え、緑や木、植物を大幅に増やすことでCO2の削減といった環境問題解決へも繋がります。
2019年11月にはティピカの苗木111,000本の寄付を行い、SAMURAI PROJECTでは、コーヒー生豆の流通量に応じて自動的に寄付される仕組みを取り入れています。
■ティピカとは
「ティピカ」はアラビカ原種に一番近い品種で、最も古い栽培品種です。長形の豆で優れた香りと酸味を持っており、風味や香りに優れ、もっとも品質が良い品種です。
栽培地の標高が高い土地でないと育たない、直射日光に弱く乾燥や病害虫、霜害、特にコーヒーの大敵である「サビ病」にはめっぽう弱いといった弱点が多く、多くの日陰樹を必要とすることから栽培には手がかかります。その上、収穫生産量が少ないため、1960年代後半からカトゥーラなど、生産性の高い品種に改良され現在ではティピカの生産量は非常に低くなっています。
これらを知り、伝統品種であるティピカを守るためにも、SAMURAI PROJECTではラオスでティピカ生産量世界一にすると掲げ、苗木の寄付をする事に決めました。
「2050年コーヒー豆絶滅の危機」を救う!?
コーヒーの需要は世界的に増加を続けており、その市場規模は1日20億杯、200億ドル(約2兆1800億円)に上ります。
現在はブラジルのコーヒー大量生産によって、消費量を上回っている状況ですが、長期的な見解では、世界的な消費者拡大と気候変動による栽培適地の減少やコーヒー生産者の減少によって、生産が消費に追いつかない状況になると予想されています。
さらに世界に生息しすでに知られている124のコーヒーの種のうち、約60%が絶滅の危機といわれており、2050年には十分に供給されなくなることが懸念されています。
日本国内で流通されているコーヒーの99.999%は輸入であるため、供給が追いつかなくなると今までのような価格でコーヒーが飲めなくなる日が来る可能性も十分にありえます。
2025年にラオス産ティピカ生産量を世界No.1へ
そのような中ラオスは、コーヒーの歴史こそ浅くはあるものの、コーヒー栽培の観点から見ると最適な土地といっても過言ではありません。
コーヒー栽培に必須であるコーヒーベルト地帯(赤道を挟んで北緯25度から南緯25度までの一帯)に属し、標高の高い土地があり、温度差のある気候、雨季と乾季があるといったコーヒー豆栽培に必要な条件が揃う栽培適地です。
「ラオスがコーヒー豆絶滅の危機を救う大きな役割を担う」。そのポテンシャルは十分に秘めていると考えています。
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