テクノロジーは野菜を生産する植物工場だけではない。オランダのアイントホーフェン工科大学を去年卒業したクロエ氏は現在、Food and Conceptデザイナーとして働いているが、そんな彼女が考案した未来の食べ物の姿が話題となっている。
彼女のコンセプト「Edible Growth」から生み出される食べ物の秘密はこうだ。丸いシルエットの外面はパン生地から3Dプリンターにて製作。
内側には発芽した種、イースト菌、キノコの菌株が、Edible Matrixと呼ばれる木の実、果物、寒天とタンパク質(虫由来のタンパク質の試験利用が行われている)から出来た”食べられる土”に埋め込まれている。
5日後には写真のように新鮮なキノコと葉野菜が芽を出して食べることができ、味と香りの強さは日数が経つごとに強くなるので、食べる人の好みで収穫日を変えながら異なる味を楽しめることができる。
残念ながら写真の試作品は手で作られたもので、この技術の実用化には程遠い。食品生産の3Dプリント技術が市場に出るためには8~10年の年月が必要だとクロエは認める。
現時点では砂糖やペースト状のものは、3Dプリントで作成が可能だが、彼女が理想とする結果を出すためには細かなパラメーターを調整しながらの根気強い研究の継続が必要だという。
伝統的な生産方法では不可能だった健康的・持続可能かつ栄養満点の食べ物の創造に、新しい食品テクノロジーを使うことが彼女の目的だという。人間だけでなく、環境にも良い暮らしを目指すことだ。
食べ物が私たちの食卓に届くまでに膨大な資源の利用、長距離のフードマイルによる二酸化炭素の排出が必要である。Edible Growthは、この資源の無駄を無くす可能性を秘めている。
彼女の研究には3D技術と食品安全の観点から越えなければならない様々な壁がある。3Dプリンター食品を作る中で一番の苦労は、デザインと動作のための3Dプリンターソフトウェアを使いこなすことだという。
参考記事:Will 3D Printing Be the Next Big Thing for Sustainable Food?など
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