中国に依存するレアアース/レアプラント(希少植物)。植物工場を利用した薬用植物「甘草」の栽培技術の確立へ(鹿島建設)

公共事業の縮小などから、新たな事業の柱として、もしくは雇用維持のために建設業からの農業参入事例が最も多い。さらに大手ゼネコン各社は09年の補正予算による大規模な植物工場建設ラッシュに伴い、建設受注に力を入れてきたものの、このところは、こうした大型案件も少なくなってきている。
 
 
例えば、今までにも大成建設では植物工場に関する建設だけでなく、小型システムの開発・販売や新規参入コンサルティングまで手がけており(関連記事)、清水建設は、生鮮食品メーカー向けにすでに3件の施設を受注しているほか、大林組も大阪市で工事を受注している、という。そして今回の鹿島建設でも、カゴメのトマト工場のほか、産業技術総合研究所の遺伝子組み換え植物の栽培向けに、植物工場の工事を受注した実績があるが、各社とも、自社でも栽培する動きも広がっている。
 
 
植物工場による漢方薬の原料となる薬用植物「甘草(かんぞう)」の水耕栽培については、以前にも三菱樹脂が中国から種を輸入し、種から薬効成分の含まれる苗を栽培することに成功している(関連記事)。今回の鹿島建設の甘草の水耕栽培システムの開発は、医薬基盤研究所薬用植物資源研究センターが苗の提供や栽培法開発を担い、千葉大が有効成分を蓄積できる条件の研究などを実施した
 
 
甘草は根に主な有効成分が含まれるが、肥料の入った水で栽培すると根が太くなりにくいのが課題であり、新システムでは、栽培中に適度なストレスを加えることで根の肥育を促すことに成功。害虫や病気などの心配がない植物工場で、日照、気温などを最適にすることで、畑では4年ほどかかる収穫までの期間を1〜1.5年に短縮できた、という。
 
 
日本の甘草の輸入量は2008年度で約1700トン。約3分の2を占める中国は近年、資源保護の観点から採取を制限し、安定供給への懸念が高まっている。鹿島は1-2年後の実用化を目指しており、量産化の実現にも期待したい。今後も、国内で漢方薬市場が拡大することは間違いない。例えば野村総合研究所によると、国内の漢方薬市場(国内生産額)は07年の1131億円から2015年には2000億円超になる、と予測している。しかし、こうした国内需要の高まりに対して、今回の甘草だけでなく漢方薬の原料となる生薬全体も、9割弱が輸入であり、その大半を中国に依存しているのが現状である。
 
 
日本漢方生薬製剤協会によると生薬の国内生産は12%であり、中国からの輸入が約8割を占めている、という。また日本だけでなく、欧米における需要も増えており、過去5〜6年で価格も1.5倍になったとの報告もある。
 
 
こうした世界的な需要拡大に対して中国では、最近のレアアース問題のように、レアプラント、いわゆる希少植物・生薬の生産・出荷を規制する動きも2000年以降から徐々に出てきている漢方薬のツムラでは、現在129種類の漢方薬を作っており、うち118種類の生薬を利用している。こうした国内企業でも、植物工場や水耕技術、その他の最先端なバイオ技術を活用しながら、漢方の原料となる生薬の栽培研究に乗り出している所も多い。
 
 
=====以下、鹿島建設プレスリリースより=====

遺伝資源の国内確保・供給に向けて
日本で初めて薬用植物「甘草」の水耕栽培システム開発に成功!

 
薬用植物をはじめ遺伝資源を国内で安定的に確保・供給することが求められる中、鹿島(社長:中村満義)、独立行政法人医薬基盤研究所(理事長:山西弘一)、国立大学法人千葉大学(学長:齋藤康)は共同で、薬用植物「甘草(カンゾウ)」の水耕栽培に日本で初めて成功し、植物工場で残留農薬の危険のない均質な甘草を短期間、かつ安定的に生産できる栽培システムを開発しました。
 
甘草は現在国内使用量の100%を海外からの輸入に依存していますが、この水耕栽培システムにより、植物工場で均質な甘草を短期間に国内生産することが出来、薬用植物の国内栽培普及に向けた新たな動きが加速するものと期待されます。薬用植物は根に薬効成分を蓄積していることが多いため、今後は他の種類に対してもこの栽培システムの適用、採算性の検証を進めていきます。
 
開発の背景

最近話題になっている植物工場では、葉物(レタス等)の栽培が一般的ですが、工場普及の課題は採算性であり、収益性の高い作物の生産に対する期待感が高まっています。薬用植物は、付加価値の高い植物の代表ですが、根部に薬効成分を蓄積するものが多く、植物工場における栽培技術はほとんど確立されていませんでした。
 
甘草(生薬名)は、グリチルリチンを主な有効成分として根部(根およびストロン)に蓄積する薬用植物で、一般用漢方製剤において処方の70%以上に使われる最も汎用度の高い漢方薬原料の一つであり、また、味噌や醤油に甘みを付ける食品添加物や化粧品の原料などにも広く使われています。
 
国内使用量の100%を海外からの輸入に依存しており、そのほとんどが野生植物の採取でまかなわれています。主要輸入国である中国の採取制限や、世界的な生薬の需要増により、輸入価格は年々高騰しており、今後ますます資源確保が困難になることが懸念されています。また、生物多様性条約関連の国内法が資源国で整備されるに従い、資源国との利益配分を考慮しないと生物遺伝資源へのアクセスが困難になってきている状況もあります。このように甘草をはじめとする漢方薬原料の安定供給には懸念が生じており、医薬、食品、化粧品業界等を中心に国内栽培への要望が高まっております。甘草の市場性の確認、最適栽培条件の探索、事業性評価などに関しては豊田通商(株)に協力をいただきました。
 
■ 詳細はプレスリリースを参照