世界人口の70%が都市部へ集中
植物工場を活用した究極の地産地消モデルも出現
国連の予測によると、世界人口は2015年現在の約73億人から、2030年までに85億人を超え、2050年までには97億人へと急増するといわれており、世界人口の拡大の中で大きな問題となるのが都市人口である。
既に世界の都市人口は全体の半数を超え、2050年には世界人口の70%弱が都市部に集中すると予測されている(注1)。
また、都市部への人口集中・経済活動を通じて「環境問題の深刻化」と「食の供給」に関する大きな問題が生じており、都市型農業においても廃棄物のリサイクル化や廃熱・CO2の再利用など、サステナブルな形での食の生産方式が求められている。
こうした背景を受け、海外ではオランダ式の太陽光利用型植物工場と大型スーパーを一体化した究極の地産地消モデル「スーパー・ローカルフーズ」に挑戦する企業も出現しており、同様のモデルを日本がトップリーダーでもある人工光型施設にて2015年からスタートさせたベンチャー企業が(株)インターナショナリー・ローカル(通称社名:インロコ)である。
小規模・植物工場モデルでの黒字化を実現
植物工場による撤退・倒産事例が相次ぐ中、同社では小規模施設による野菜の生産・販売事業でも黒字化を実現し、新たな地産地消モデルを提案している。
人工光型に限定した場合、弊社の調査では全体の1割程度、他社調査においても2~3割程度が黒字化を実現しており、近年では量産化ノウハウを確立し、大規模施設での黒字化を達成する企業も現れている。
自動化設備を導入した植物工場では、効率的な施設運営を行うために一定規模の施設サイズが必要となり、リーフレタスが1日1,000株以下の小~中規模施設での黒字化は非常に困難である。しかし、1日数千株の大規模施設となれば数億円の設備投資が必要となり、資本力のある一部の大手企業しか参入が難しい状況であった。
2008年に設立した同社では市場・技術調査を経て、2010年に事務所スペースも含め約150㎡の植物工場(糸満工場)を稼働させる。1,000㎡を越える他社の植物工場施設が多い中で、同社の植物工場は小規模に分類される。
他社ではリーフレタスの生産が多いものの、同社ではアイスプラントやハーブ系のミニ野菜など、競合商品の少ないニッチな高付加価値野菜にターゲットを絞り、沖縄県内のスーパーやコンビニ、ホテル・レストランへと販路を拡大しながら、生鮮野菜の生産・販売事業での黒字化を達成した。
(注1) 2014年7月の国連報告書によると、総人口に占める都市人口の割合は1950年の29%から2008年に50%を超え、最新データでは54%となっている。都市人口予測では、2050年には66%にまで拡大すると見込まれている。