イスラエル伝統組織「モシャブ」 ハイテク温室による水が出ない新品種トマトの開発

 IT、医療、そして農業分野においてハイテク市場に強みを持つイスラエルについて、今回は伝統的なモシャブ(Moshav,農業共同組合のようなもの)でのトマト栽培にチャレンジするR.T. fresh社を紹介する。

同社は30年続く老舗企業であり、主に生鮮食品を中心に野菜・果物の生産から梱包、そして輸出まで行っており、生産から販売まで一貫して高度なトレーサビリティ・システムが導入されている。

こうした安全・安心でかつ、マーケットニーズに合った商品を提供する企業であることが、同社の強みの一つだ。

同社の農場はイスラエルのNegev(ネゲブ)西部に大規模な露地栽培とハイテク温室ハウス(太陽光利用型植物工場)があり、その面積は100ヘクタール以上にもなる。

イスラエル伝統組織「モシャブ」 ハイテク温室による水が出ない新品種トマトの開発
当然のことながら農薬管理も徹底して行われており、欧州市場への輸出には必須となる「グローバルGAP」の認証も得ている。そして同社では現在、新品種トマトの実験栽培をイスラエル南部にあるモシャブ(Moshav)「Tkuma」にて行っている。

イスラエルの特殊農業形態
「キブツ(Kibbutz)」「モシャブ(Moshav)」

 イスラエルの農業形態の多くが、個人農家ではなく、キブツ(Kibbutz,共同村のようなもの)やモシャブ(Moshav,農業共同組合のようなもの)といった集団単位で生産するのが一般的である。

日本からもボランティア・ツアーなどがあるキブツでは、自給自足を実現している村のようなものであり、そこには農場だけでなく、工場や学校、病院といったものも存在している。

一方、モシャブ(Moshav)は日本の農業共同組合のようなものであり、農業資材の購入や農作物の販売も共同で行っている。


 R.T. fresh社では、伝統的なモシャブ(Moshav)で新しい品種のトマトを栽培している。その特徴は「カットしても水が出にくい」という点。

同社では、学校や旅行といったシーンで食べる、サンドウィッチ用をターゲットにしているようだ。

通常のトマトの場合は、カットすると水が出て、サンドイッチが水を吸ってしまい、美味しさがなくなってしまう。こうした課題を解決する新たな商品の開発に専念している。


 今回の新品種トマトは、果実の固形部位に水分を閉じ込めることができ、カットした後に冷蔵庫で保存しても、数日間は水が出ないという。

このように、イスラエルでは、新たな市場・ニーズ開拓のために様々な品種が開発され、欧州やロシア市場に販売されている。

また、イスラエルの強みは冬の間でも、低コストでトマトを栽培できる高度な技術と経験を持ち、世界市場で挑戦できる豊富なビジネス・ネットワークを保持している点も挙げられる。


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