人工光型植物工場の6割が赤字。成功ポイントとは?

完全人工光型植物工場の6割が赤字・黒字化事例も増加傾向

 2009年に全国50カ所の植物工場を対象にした弊社の独自調査においても、6割が赤字であり、3割が収支均衡という結果であった。50ヶ所のうち完全人工光型植物工場は34ヶ所となっており、太陽光利用型も調査対象に含まれているが、回答を得た数の8割以上が人工光型植物工場であった。

調査方法としては、アンケートや直接インタビューを行い、野菜の生産・販売事業のみでの収益状況を想定して質問を行っている。

企業によっては、補助金を受けた施設、子会社・関連会社による生産・運営を行っている施設、野菜の生産だけでなく設備販売や技術ライセンス事業を行っている等、様々なケースが考えられ、明確に赤字・黒字という線引きを行うことが難しい状況ではあるが、人工光型・植物工場全体の経営状況を把握する上では参考になるだろう。

上記の調査結果について、完全人工光型植物工場に限定して現在の赤字・黒字割合を推計しても、恐らく大きな変化はないだろう。
最近は黒字化する企業が増えつつある中で、それ以上に新設の植物工場施設が増えており、稼働開始から数年は赤字状態が続くのが一般的だからである。

例えば、日本施設園芸協会が2014年にまとめた調査では、以下のような結果となっている。

  • 人工光型の植物工場では黒字が30%、収支均衡が7%
  • 植物工場の稼働率が50%未満の事業者が20%

 

完全人工光型植物工場は2014年で全国165カ所へ拡大

人工光型植物工場の6割が赤字。成功ポイントとは? 3次ブームのキッカケでもある植物工場向けの補助金が投入された2009年当時、植物工場の稼働数は太陽光利用型も含めて50ヶ所であったが、2014年3月末現在、全国の植物工場施設は完全人工光型165カ所、太陽光利用型218カ所(補光あり:33カ所、補光なし:185カ所)と推計されており、現在でも稼働数が拡大している。

2009年当時、人工光型で黒字を達成しているのは、1990年代の2次ブームに建設されたキューピーの植物工場(技術ライセンス先も含む)しか成功事例がない状況であった。ただし、2次ブームにて建設された多くの施設が補助金を受けており、補助金がない純粋な採算性という点では黒字化事例はゼロといってよいだろう。

植物工場による黒字化は、ここ最近の話/2013年前後?!

 現時点では非常に少ないものの、人工光型・植物工場による黒字化事例が出現したのは、ここ最近の話であり、2013年頃からである。補助金なしの黒字化事例は、少なくとも2010年以前ではゼロといってよいだろう。

2009年の3次ブームによる建設事例や、それ以前から施設を運営していた企業が、長年の試行錯誤を経て、安定的な量産化技術や高付加価値野菜の生産ノウハウを確立し、黒字化を実現するのが2013年前後からである。例えば、リーフレタスによる植物工場の安定的な量産化技術を確立し、黒字化を経て、技術ライセンス・フランチャイズ事業をスタートさせた株式会社スプレッドが代表例である。

弊社の支援企業例:(株)インターナショナリー・ローカル
インロコ、イオンに植物工場を併設。究極の都市型農業・店産店消モデルを推進 リーフレタスの量産化事例の他、小規模施設でもアイスプラントやハーブ系のミニ野菜など、競合商品の少ないニッチな高付加価値野菜にターゲットを絞り、3年ほどで黒字化を実現した事例もある。事業プラン次第では、小規模でも成功モデルを作り上げることが可能である、といえるだろう。

 ● インロコ、小規模植物工場・地産地消モデルでの黒字化へ

同社では沖縄のイオンにコンテナ型植物工場を設置するとともに、イオン店内にて植物工場野菜を販売するという究極の店産店消モデルを実践している。

その他、食料生産技術の実証施設として、人工光型のイチゴ植物工場、アクアポニクス併設型、太陽光パネルと蓄電池を導入したオフグリッド型植物工場の研究開発とともに、コンテナタイプの太陽光利用型植物工場の試験栽培も行っている。
 

植物工場による赤字割合が多いのに、なぜ多くの企業が参入するのか?

植物工場ビジネスには、製造業、建設業、IT、鉄道などのインフラや銀行・金融サービスなど、幅広い業種からの参入が見受けられる。共通した参入理由は存在せず、各社の実情によって異なるが、計画当初から大きな収益事業を目的としないケース、大きな事業を目指したが計画通りにうまくいかなかったケースが多い。

  • 補助金の取得を通じた研究開発目的
  • 有休施設の活用
  • 建設業などに多いが、高齢化社員の割合が増え、通常業務が難しい社員に対する雇用維持のため
  • 民間の子会社による障がい者雇用、社会福祉法人といった企業が福祉型農業を目指すため

また、大きな売上・収益事業を目指して参入を果たした企業の多くが1~2社の見積をもとに設備導入を決定しており、投資額の妥当性や採算性シミュレーションの正確性について、様々なアプローチからの検証が不足している印象を受ける
たとえ導入実績の多い植物工場システムであっても、運営するオペレーションの問題(例えば作業員の熟練度)から、安定生産までに1~2年の期間が必要であることを想定して事業計画を作りこむ必要があるだろう。
 

植物工場にて、どんな野菜を生産すればよいのか?成功ポイントは?

弊社に最も多く寄せられる質問だが、全てに共通していえることは、すぐに儲かるような作物・品目はないということである。現在、高値で取引されている作物というのは、栽培が難しい、種子や苗の調達ができない、生産から収穫までに長い時間が必要など、それぞれに理由があるからだ。

しかし、環境制御・植物工場によって、上記のような課題を解決する可能性は大いにある。よって、市場価格が高く、今後も世界的に需要がある作物を選択し、いち早く研究を始めるしかない。
あるいは、販路を既に持っている企業は、実績のある他社から設備購入や技術ライセンスを受け、早い段階から量産事業を展開する必要がある。こうした他社ライセンスでの成功事例も少ないながらも増えている。

ここでは具体的な作物や細かい解説は省略するが、ポイントになる項目を簡単に記載した。

  1. 事業目的を明確にする
    各社によって参入理由が異なるが「収益を生む事業」「社会貢献や雇用維持の目的が強い事業」など、その目的と具体的な数値を明確にする必要がある。目標とする売上規模によっては事業モデルが限定される場合もあり、雇用人数によってはプランを見直す必要がある。自動化を進める植物工場では施設の運営・管理だけの業務では大きな雇用を生むことが難しいからだ。
  2. 導入設備の検証
    参入当初は他社の植物工場システムを導入するケースが多い。実績を持つ複数企業への見積とともに、同じタイプの設備を導入している他企業へのヒアリング調査を実施する。自社だけでは難しい部分は、必要に応じて外部専門家に依頼することも検討する必要があるだろう。
  3. イニシャルコストの削減
    完全人工光型植物工場には大きな設備投資が必要となり、運営コストの約3割が減価償却として経営を圧迫してしまう。自社や関連企業が保有する製品や技術が応用可能であれば、一部の資材を自社に切り替えることも重要である。汎用品が植物工場に利用できる場合も多い。さらに削減が必要であれば、海外資材の調達を検討することも考えられるだろう。
  4. ランニングコストの削減
    試験的でも実際に施設を稼働している場合、無駄な作業がないか、オペレーションの見直しが必要である。必要に応じて自動化装置の導入を検討する必要もある(例えば、播種機・野菜の梱包機・パネルの洗浄機など)。現場レベルでの工夫・改善により、栽培日数を10日間短縮、ラニングコスト20%減を達成した事例もある。
  5. 栽培する作物の選択
    繰り返しになるが、すぐに儲かるような作物・品目はない。青果市場や関係者(小売・流通など)を訪問し、常に最新情報を収集する必要がある。取引価格の高いニッチな作物は、トレンドの変化が早い傾向にある。海外から新しい作物・品種が流入してくることも考えられ、グローバルな視野で将来的な需要を判断しなければならない。時には海外市場や現地の生産者・種子メーカーとの情報交換も必要である。
  6. 事業モデルの工夫・販路の確保
    どんな作物であっても植物工場による生産・販売事業のみで大きな利益を確保することは難しい。六次産業化や農業とは異なる分野との連携も必要である。また、事業プランを考える際に共通した課題は販路の確保である。施設を運営してから販売先の営業を開始する企業は失敗するケースが多い

    例えば施設稼働前の販路開拓を行う場合、ターゲットとする顧客に対して価格・数量・具体的な品目といった交渉にはサンプル商品が必要であれば、企業向けの植物工場レンタルファームを利用する、あるいは稼働率の低い他企業の施設をレンタルする、といった方法も考えられる。
[無料相談] 市場規模の算出・予測/競合他社分析/事業プランの提案まで幅広く対応
植物工場をはじめとする (食=Food)(農=Agri) の調査・シンクタンク機関である弊社では、新規事業や企業経営から栽培に関する具体的な相談まで、専門の研究員が幅広い相談に無料で対応いたします。

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