完全制御型・特殊技術にて遺伝子組換え作物の研究施設向けシステムの開発。一般的な多段式ユニットも含め、さらなる事業展開をはかる(朝日工業社)

朝日工業社は、遺伝子組み換え植物を対象とした完全制御型植物栽培システムや、葉菜類を対象とした多段式野菜栽培システムといった要素技術の展開を開始、アグリビジネスに力を入れる予定である。「今後も技術研究所でシステムの最適化、エネルギーコストの低減、栽培ノウハウを重ねるとともに、国や大学などの研究機関と連携する」という。
 
 
完全制御型遺伝子組み換え工場は、単に遺伝子を組み換えて生産性や品質を高めるのではなく、遺伝子を組み換えることで、本来植物にない物質を取り出す。例えば、従来は微生物などに頼っていたインフルエンザワクチンの精製につなげる研究も行われている。同社では、2006年から今春まで、経済産業省の委託研究事業に参画、開発を進めてきた遺伝子を組み換えたイネを使った医薬品原材料用有用物質生産技術も今後、展開可能である。
 
 
同社は、有用物質を安定・効率的に大量生産できる栽培方法をもとに、インフルエンザウイルスの経口ワクチンの生産など、遺伝子組み換え植物の産業利用対応施設や、原薬GMP(医薬品などの製造管理・品質管理規則)対応施設、育苗から栽培、収穫、製剤化まで一貫生産ができる点が強みである。組み換え遺伝子の拡散を防ぐため、イネの開花時に浮遊花粉を捕集するフィルターや、室圧管理、栽培残さの処理など、クリーンルームや病院向けの技術を応用しているほか、照明室は外気冷房空調を取り入れるなど、省エネ、環境負荷の低減につなげる。
 

 
イネの場合、苗を定植してから収穫まで、一般の水田は約120日だが、植物工場の場合約90日と短く、単位面積当たりの収穫も65%増え、1年に3−4作可能になるなど、高付加価値植物質の生産・蓄積量も高まる。また、ワクチンなどはイネ由来であるため、穀物と同じ常温で保存できるという。今まで、研究用として全国に6件程の納入実績があり、今後は遺伝子組み換え向け以外にも、一般的な多段式のユニットも販売展開していく予定である。<参考:建設通信新聞・記事より>