収穫後そのままサラダで食べられるナス品種「サラダ紫」/新たな調理法でナスの需要拡大<神奈川県農業技術センター>

神奈川県農業技術センターが2007年に開発した「サラダ紫」は、見た目は水ナスだが、最大の特徴は「生でも食べられる」こと。一般のナスと比べて水分は3割多く、糖度も1割高い。09年に品種登録され、県内では年間100トン前後を生産している。開発に着手したのは2003年。「サラダ向きの新品種を作ろう」と県が種苗会社の「サカタのタネ」と手を組んだ。
 
ライフスタイルの変化で料理の省力化がすすむ中、いため物や焼き物が主流のナスは需要が低迷している。同技術センターの北宣裕部長は「新たな調理方法でナスの需要を掘り起こそうとした」と話す。
 

<写真:神奈川県農業技術センターより>

 
神奈川県はナスの主力産地でない。それでも北部長は「神奈川県だからこそできた」と言い切る。理由は、全国から住民が集まる地域性にある。ナスは土地柄によって受け継がれてきた品種が異なる。京都の賀茂ナスや大阪の水ナス等、なじみの薄いものはほとんど売れないと言われるほど地域性の強い野菜である。
 
 
一方で神奈川県は住民の出身地がさまざま。百貨店などの小売店で「京野菜」が売られるなど、消費者は多種多様なナスを食べている。北部長は「見慣れない品種でも受け入られると思った」と話す。また、民間の種苗会社ではなく県が先導したのも理由がある。
 
 
1粒で1株を収穫できるホウレンソウなどとは異なり、ナスは1粒あたりの収穫量が多い。種苗会社にとっては種販売の採算性が低いため、民間企業だけでは取り組みづらかった。こうして始まった「官民共同研究」。サカタのタネと種を持ち寄り、生でも青臭さが少ない、のどごしのよい品種を探した。
 
 
水分の多い水ナスや肉質の柔らかい大長ナスなどのほか、サカタのタネが持つネパールの多産用品種など120種類を掛け合わせた。3年かけて甘く、柔らかく、水分を多く含む品種を選定した。形状はなじみのある細長型ではなく、巾着型を採用。店頭で消費者が既存品種と差別化できるようにした。発売から4年を経て意外な特徴もわかってきた。「調理不要」が売りだったが、揚げ物やいため物向けにも人気が高いという。
 
 
理由は水分を多く含むため、油を吸いにくいからだ。健康志向の消費者が好むといい、「糖尿病のお父さんに」と直売所に買いに来るリピーターも増えた。今後の課題は認知度の向上だ。
 
 
サラダ紫の年間生産量は100トン前後で4年間の推移は横ばい。県内の直売所のほか、スーパーなどの小売店が主な販売先だ。北部長は「今後、全国展開を目指すため対策を検討中」と話す。開発当初から生産を続ける農家の広瀬重治さんも「漬物などにも合い、調理方法は多様。今後はレシピと合わせて多くの人に広めていきたい」と意気込んでいる。<参考:日経MJ、神奈川県農業技術センターなど>
 
 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
植物工場・農業ビジネス編集部

植物工場・農業ビジネス編集部

投稿者プロフィール

植物工場・農業分野を中心に環境制御技術に関する最新動向ニュースを配信しております。

この著者の最新の記事

関連記事

次世代農業EXPO 植物工場バナー
植物工場ビジネス・セミナー講義バナー

過去のピックアップ記事

  1. 植物工場によるベビーリーフの受託生産を計画
     福井県にて大規模な完全人工光型植物工場を運営するシーシーエスは、ハウス土耕などでベビーリーフを生産…
  2. グーグルが農業ビッグデータ解析ベンチャーに18億円の投資
     テクノロジーベンチャーに投資を行っているグーグル・ベンチャーは、農業ビッグデータ解析サービスを提供…
  3. イノベタスの世界トップ規模のフルLED植物工場の完成披露へ
     株式会社イノベタスは7月10日、2015年3月に完成した「富士ファーム」の完成披露式典を行った。イ…
  4. 植物工場による生産・販売事業からの撤退、今後はプラント開発に集中
     1992年に京都で創業したシーシーエス株式会社は、LEDを使用した照明装置の専業メーカーである。特…
  5. カナダ・サンセレクト社、植物工場によるトマト・パプリカの生産施設拡大
    カナダに本社を置くパプリカ・トマトの生産・販売企業であるサンセレクト社では、今年の秋から太陽光利用型…
  6. 人工光を利用し、連続光への耐性遺伝子でトマトの収量2割増
     野生種トマトに存在する遺伝子を導入し、栽培種トマトの苗を自然光と人工光の下で1日24時間生育させる…
  7. ローム、イチゴ植物工場の事業者を2月末まで募集。新規参入向けに栽培ノウハウ提供
     ロームは、自社にて開発したイチゴ栽培を目的とした完全人工光型植物工場の事業化を目指す事業者の募集を…
  8. 郵船商事による植物工場が福井に完成、1日1万株の大規模・人工光型施設へ
     郵船商事株式会社は、2014年10月より福井県敦賀市において植物工場建設を進めており、4月10日に…
  9. 植物工場による微細藻類の可能性 ミラノ万博でも展示
     日本ではユーグレナに代表とされる微細藻類の多くが開放型(ため池)での生産が一般的だが、海外では太陽…
  10. ベトナムの不動産開発ビン・グループ、有機露地栽培・植物工場など高品質野菜の生産へ
     ベトナムの不動産開発大手のビン・グループは、子会社(ビン・エコ)を設立し、有機栽培や植物工場などの…
150629_英語ページバナー ログインページ(無料会員登録)_topside.logo
無料相談(経営相談・新規事業)バナー
151226 プレス募集バナー PR記事バナー 人材募集バナー

注目記事

  1. JFEエンジニアリングなど、オランダ式の太陽光利用型植物工場にてトマト・ベビーリーフの生産へ
     プラント設計・施工大手のJFEエンジニアリングが北海道・苫小牧市の苫小牧東部工業基地(苫東)で建設…
  2. イベント報告、フェアリーエンジェル植物工場の試食見学会
    2008年7月12日に、植物工場ビジネスに関して(株)フェアリーエンジェル、代表取締役の江本謙次氏を…
  3. 米国における学校・教育向け施設園芸・植物工場が増加。農家と学校をコーディネートするNPO団体の貢献も大きい
     米国フィラデルフィアにあるストロベリー・マンション高校に併設する敷地内にて、新たに太陽光パネルを導…
  4. 発電過程から出るCO2と廃熱を植物工場に利用。キャタピラー社とサンセレクトが戦略的提携を発表
     30年以上の太陽光利用型植物工場による高品質野菜の生産を行うサン・セレクト プロデュース社と建設・…
ページ上部へ戻る