台湾・中国、ベトナムなど海外市場への進出・農作物輸出に力を入れる北海道の農協・農業生産法人(中山農場、輝楽里)

帯広市別府町の帯広市川西農協の工場では、国内では人気が低い巨大サイズのナガイモを選別し、海外への輸出に力を入れている。張り巡らされたベルトコンベヤーの前では、女性従業員数十人が続々と流れてくるナガイモの選別を行い、自分が担当する大きさや形、質を見極め、脇の段ボールに詰めていく。海外への輸出は1999年、大きいサイズが薬膳として重宝される台湾から始まり、2007年には米国に販路を拡大。輸出量は1年目の約684トンから昨年は全収量の8%にあたる1644トンに増加し、輸出総額は3億8千万円に上った。
 

<台湾で販売されているナガイモ。Mサイズ程度で約1400円と高級品だという、参考:社団法人帯広青年会議所より>

 
国内市況の低迷時には輸出を増やして国内流通量を調整し、市場価格を維持できる効果もある。輸出前10年間の農家の平均収入は、10アールあたり56万8千円。輸出後10年間の平均は約3割増の72万5千円になった。04年に2棟目の貯蔵施設が完成して通年出荷が可能となり、従業員も増やした。工場ではいま約70人が働く。同農協の常田馨農産部長は「自立した、努力が報われる農業経営をしなければならない。輸出はその一環だ」と話す。
 
 
その他にも北海道・別海町の中山農場では、近い将来の海外輸出に向けて、ミルクの加工工場やベトナム人研修生の受け入れ等を行っている。同農場は、250ヘクタールの牧場に約700頭の乳牛を飼育し、毎日10トンの牛乳を生産する巨大ファームである。ホクレンが乳業メーカーと決めた価格を基に取引されるため、規模拡大や乳量が増える牧草の改良などで生産性を高めてきた。
 
 
しかし、近年の価格は下落傾向で、輸入飼料の価格は高騰。生き残り策として今年4月、9千万円を投じて、約200平方メートルの加工工場「ミルク工房」を建設した。毎日約1トンの牛乳を使って、高い利益が見込めるチーズを生産。すでに道内のレストランへ販売しているが、近い将来、海外への輸出も見据えている。
 
 
また、数人のベトナム人研修生を受け入れ、数年間酪農を学んでもらい、帰国後に乳製品の需要が高まるとみる同国での「現地生産」を担ってほしい、との思惑がある。「農産物の自由化はいずれ進む。海外から利益を持ってこないと生き残れない。発想は製造業と同じだ」。中山勝志社長はこう指摘する。
 
 
同様の目的のため、北海道江別市の生産法人「輝楽里(きらり)」は今年3月、中国・長春に現地法人を設立。1千万円をかけて3ヘクタールの敷地にハウス50棟を造り、トマトやキュウリ、メロンなどの栽培を始めた。作業するのは研修生として受け入れていた中国人ら約10人。狙うのは、地元の富裕層らの需要取り込みだ。
 
 
輝楽里は国内では約140ヘクタールの農地で米や野菜を作り、スーパーなどへ販売している。石田清美社長は「市場の縮小で国内で作っても食べてくれない時代がくることだってあり得る。TPP(環太平洋経済連携協定)はピンチだが、輸出や検疫のハードルが下がってチャンスに変えられる可能性もある」と話す<参考:asahi.comなど>