自動車・照明/LED・金属加工など製造業からの植物工場参入が相次ぐ。今後の事業展開への課題をどのようにクリアすべきだろうか

最近は自動車・照明/LED・金属加工といった製造業から植物工場へ参入する事例が急増している。運送会社の「山梨通運」は今年4月、不況の影響で使わなくなった倉庫を利用して、リーフレタスの栽培を実験的に始めた。幅6m×奥行き60cmの栽培棚を5段重ね、蛍光灯の明かりで水耕栽培しており生産量は1日に60株、1年間で約2万株以上が収穫可能だという。計画の事業費用は700万円程、うち半分を助成金でまかっている。
 
 
また、電気設備工事会社の「林田電気システム」ではコンテナを利用した「野菜工房」の中で、バジルやルッコラ、エンダイブなど様々な葉野菜を栽培している。同社は、従業員約20人の町工場であり、以前はトヨタ自動車関連の仕事が大半で工場の自動制御盤の設計や据え付けなどを請け負っていた。しかし、トヨタショックとも言われた2008年秋以降の不況で、仕事は激減し、新たな収益事業を構築すべく、農業分野への参入を決断した
 
 
同社が開発するコンテナ型植物工場は、敷地内に長さ約6m、幅約2.4m、高さ約2.6mの20フィート型海上コンテナを敷地内に設置して、2009年7月に野菜の生産を開始した室温や湿度、市販の化学肥料から調合する「液肥」の供給の管理には、自動車工場で培ってきた制御技術を生かしている
 
 
このように、本業の受注減から新たな収益事業として農業参入を果たす企業が多い。製造業の場合、どうしても露地・土壌栽培よりも、水耕やハイテク施設・植物工場分野への進出が多い。製造業で培った技術や経営ノウハウが生かせる分野だと判断しての参入である。
 
 
上記以外にも、金属加工の「東和製作所」は、原材料の高騰で経営が厳しくなった3年前から、板金加工の技術を生かし、植物工場システムの開発に取り組んでいる。同社では2011年春をめどにコンテナ型(縦3×横6×高さ3m)の植物工場を価格300万円で販売することを目指している。金属加工の自社技術を生かして、厚さ1・6 nm の鉄板2枚の間に、断熱材をはさんだ構造になっており、カセット式の苗床とエアコン、空気清浄機、貯水タンク、電子ユニットなどを組み合わせた栽培システムである。
 
 
こうした参入についての報告では「野菜を生産すれば高評価で売上が上々である」、「栽培システムを販売すれば問合せが殺到している」という記事・情報が目立つが、実態は厳しく黒字化や成功までには様々な課題(経営・技術的)をクリアしなければならない。
 
 
多くの日本企業が食に興味を持ち・ビジネスチャンスととらえ、参入傾向にあるが、事業を継続するためにも、新規参入する前に様々なアプローチからの調査が必要だろう。中小・ベンチャー企業によるニッチ戦略(売上高1億円以下?)による事業継続は可能ではあるが、どの企業も海外意識が低いような印象を受ける
 
 
国内で戦う場合、一般的な作物栽培・ビジネスモデルで成功することは非常に難しく、例えば店舗併設型や駐車場での短期的なコンテナ栽培など、新しいアイデア・工夫が必要である。植物工場開発・販売企業は待ちの姿勢でも、多く企業から問い合わせが来るだろうが、実質的に受注まで至るケースは少ない。数百件の問い合わせに対応しても1件の受注にも至らない場合は、自社から新たな事業モデルの提案や営業を行うことも重要ではないだろうか。
 
 

日本国内の植物工場ビジネスについては、調査レポート:植物工場ビジネスの将来性『植物工場の6割赤字/収支均衡3割の現状を打破するためには』 に掲載しておりますので、参考にして頂ければ幸いです。

 
 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
植物工場・農業ビジネス編集部

植物工場・農業ビジネス編集部

投稿者プロフィール

植物工場・農業分野を中心に環境制御技術に関する最新動向ニュースを配信しております。

この著者の最新の記事

関連記事

大和ハウス工業 アグリキューブ 植物工場バナー
次世代農業EXPO 植物工場バナー
植物工場ビジネス・セミナー講義バナー
    ミラノ万博レポート「食と農業の未来」

過去のピックアップ記事

  1. 野菜の機能性に関する測定方法(機能性表示食品制度にも応用)
     機能性表示食品制度による商品の販売が6月16日より開始されました。当初は飲料や加工食品、サプリメン…
  2. 日清紡による植物工場イチゴ「あぽろべりー」の出荷開始
     完全人工光型植物工場にてイチゴを生産する日清紡ホールディングスが、量産栽培に成功し、近日中の出荷を…
  3. 英国政府、アグリ技術の事業化支援に30億円を投資
     約125億円の規模をもつ大型官民ファンドのアグリテック・カタリストでは、イギリス国内に蓄積されてい…
  4. 郵船商事による植物工場が福井に完成、1日1万株の大規模・人工光型施設へ
     郵船商事株式会社は、2014年10月より福井県敦賀市において植物工場建設を進めており、4月10日に…
  5. 大規模植物工場のスプレッドが生産体制を増強・フランチャイズ事業を展開へ
    スプレッドでは、植物工場野菜ブランド『ベジタス』の需要増加に伴う生産体制増強のため、自社の技術力を結…
  6. 日清紡がイチゴ植物工場の増設へ 関東・東海エリア需要にも対応
     完全人工光型植物工場を運営する日清紡ホールディングスの徳島事務所ではイチゴの生産・事業化を進めてお…
  7. 植物工場による生産・販売事業からの撤退、今後はプラント開発に集中
     1992年に京都で創業したシーシーエス株式会社は、LEDを使用した照明装置の専業メーカーである。特…
  8. 横田ファーム_イメージ写真
     植物工場のような過剰な設備投資をかけず「半自動化」と栽培を行う上で重要なモニタリング制御のみを導入…
  9. 太陽光型植物工場でも周年栽培へ 新たな四季成り品種を開発
     美味しい一季成りイチゴの周年栽培を目指し、多くの企業が完全人工光型植物工場によるイチゴの生産事業に…
  10. カナダの植物工場市場/国内における施設面積1335ha・市場規模1568億円にて主力産業の一つ
    米国の植物工場・市場動向トレンド  世界市場において植物工場への投資が加速している。米国では人工光…
150629_英語ページバナー ログインページ(無料会員登録)_topside.logo
無料相談(経営相談・新規事業)バナー
151226 プレス募集バナー PR記事バナー 人材募集バナー

注目記事

  1. タキイ種苗、トマト黄化葉巻病耐病性の大玉トマト「桃太郎ピース」を発売
     タキイ種苗株式会社は、2014年の新品種として食味と秀品性にすぐれ、夏場のハウス栽培にて急速に発生…
  2. エスジーグリーンハウス、植物工場による低カリウムレタスの生産へ
     2007年より太陽光利用型植物工場にてリーフレタスの生産・販売を行っているエスジーグリーンハウス(…
  3. 韓国とイスラエルによる共同ドローン開発がスタート。ブドウ畑などハイテク農業用ドローンなどを想定
     韓国とイスラエルの両国がそれぞれの政府支援を受けてドローンの研究開発を実施する、と6月20日に公表…
  4. LED植物工場、玉川大学サイテックファームが日産3200株の施設稼働
     西松建設グループと玉川大学は平成24年1月17日に産学連携協定を結び、フルLED光源を採用した完全…
ページ上部へ戻る