肥沃な土壌確保に積極的な先進国(ランドラッシュ)。60年後には世界的な土壌農地が消失する可能性も

2008年の穀物価格高騰をキッカケに、中東や中国・韓国といった国々が途上国の農地獲得に向けて、積極的に動き始めていることは周知のことである。現在では、途上国における約4000?5000haの農地が売買され、1000億ドルもの金額が取引されている、と言われている。こうした現状を世界銀行は「Global Land Rush」(世界的な土地獲得競争)と題して調査レポートを発行しているが、こうした各国の土地獲得競争に対して警鐘を鳴らしている。
 
肥沃な土壌確保に積極的な先進国(ランドラッシュ)。60年後には世界的な土壌農地が消失する可能性も
 
レポートを要約すると、途上国では土地の売買に関する法律が整備されておらず、非常に弱い立場となる。ここでは対等・公平な取引は実現されず、法外に安い価格で農地が取引されている。契約では、農地に投資を行うことで、現地雇用やインフラ整備が約束されてはいるものの、実際にはこうした約束を守る投資家は少ない。逆に現地の資源に多大な損害を与えるケースもある、といった内容である。<詳細記事
 
 
こうした警告を無視してでも、各国としては農地確保・食料生産のための肥沃な土壌確保に積極的な姿勢を見せるだろう。例えば、Carbon Farming が実施した会議にて、シドニー大学のサステナブル農業の専門家でもあるJohn Crawford 氏(WEBサイト)が、以下のような研究データを発表している。
 
 
発表によると、年間に750億トンもの土壌が失われており、世界の農地の80%以上が少なからず、何らかの影響を受けている。特に中国では、自然環境の中で起こるスピードの57倍もの速さで土壌が消失しており、欧州では17倍、米国では10倍、オーストラリアでは5倍、といったスピードで土壌が失われている、という。
また、土壌中には貴重な炭素が含まれているが、耕作することで温室効果ガスの放出にもつながり、欧州やイギリスを含む世界的な土壌農地は、抜本的な対策を講じない限り、60年後には無くなってしまう、と予測している。
 
 
多くの途上国では、農地開拓のためのインフラ支援が財政的に厳しく、肥沃な土壌環境であるが未整備の土地も多い。こうした土地には過去、大量な化学肥料投下が行われいないケースも多く、有機栽培や循環型農業を実践しやすい。

一方で、化学肥料や農薬、大型機械といった設備やテクノロジーを活用せずに、今の世界的な人口増をまかなえる食料生産が可能である、とは考えにくい。欧米では都市部の屋上や駐車場、公園といった敷地スペースに水耕栽培(簡易的な温室栽培)を設置して、小さいコミュニティ内にて食料を自給しようとする取組みは数多くあるが、その効果は断片的である。
 
 
先日、シンガポール政府がLEDを利用した植物工場の開発・普及の発表を行ったが、建物内や省スペースでも栽培可能な植物工場も、食料自給向上のための一つの手段なのであろう。自国にある土壌資源の再利用・回復、都市部を中心とした水耕栽培(植物工場)、海外農地による食料生産など、今後も各国の取組み・情報をお伝えしたい。
 
 

日本国内の植物工場ビジネスについては、調査レポート:植物工場ビジネスの将来性『植物工場の6割赤字/収支均衡3割の現状を打破するためには』 に掲載しておりますので、参考にして頂ければ幸いです。

 
 

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