外食・小売企業による中国進出。三越伊勢丹では現地にて農業生産も計画

 一時期は落ち着いた感があった日本企業による中国進出だが、国内市場における景気後退やデフレ、長期的にも市場規模の拡大が見込めないと判断する企業も多く、ここにきて中国や海外市場への進出・店舗拡大をはかる企業が増えてきた。

先日は大戸屋のタイ・バンコク市内での植物工場建設に関するニュースを紹介したが、今回は、持ち帰り弁当店「Hotto Mott(ほっともっと)」を展開するプレナスも今月29日に、中国・北京に新店舗をオープンする。

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中国でのブランド名は「Hotto Mott 好麦道(ハオマイダオ)」。中国第一号店の「中関村鋳誠大厦店」は、オフィスビルの1階約97平方メートルに出店。

情報技術(IT)企業などのオフィスや大学、住宅が集まる中関村地区で、日常食としての需要が期待できるとみている。同店の売り上げ目標は、月360万円。店内には、飲食スペースも5席を設けている。

外食・小売企業による中国進出。三越伊勢丹では現地にて農業生産も計画
 同社はタイの企業とフランチャイズ契約を結んで、2006年3月から定食屋「やよい軒」をタイ現地にて展開しているが、持ち帰り弁当店を海外で展開するのは初めて。プレナスによると、中国での日本企業の弁当販売店も例がないという。

食材は中国で調達するが、日系企業の現地工場で精米した米を軟水で炊いたり、一部の野菜は農薬検査を通過したものを使ったりして、ブランド力と安全性の実現に注力した。

中間層以上をターゲットにしており、のり弁当(16元=約211円)や、から揚げ弁当(17元=約224円)など、日本でも人気のメニューを取りそろえた。

 現地の食品加工会社と、東京に本社を置く貿易会社と3社で中国での店舗を運営する合弁会社「北京好麦道餐飲管理有限公司」を7月中にも設立。資本金約2億7千万円のうち、55%をプレナスが出資する。今後5年間で、中国国内に200店舗の出店を目指す。

中国現地にて農業事業への参入も

 こうした中国進出は外食企業だけではない。大手デパートの三越伊勢丹ホールディングスは、中国・天津市で農業事業に参入し、日本の技術を用いて作った野菜や果物を現地で販売することを計画している。

同社は、天津市から農地を借り受け、来月から農業事業を新たに開始する。宮崎県の農業法人と提携して、ミニトマトや大根、イチゴなどを生産し、天津市にある伊勢丹の店舗で独自のブランドとして販売する計画で、日本の大手デパートが中国で農業事業に参入するのは初めて、という。

中国では、安全で質が高い日本の食品への人気が高まっているが、輸入規制から台湾などを経由して中国国内に持ち込まれることが多い。例えば、海外でも人気が高まっているイチゴも直接、中国国内に輸入することができないのが現状である。

 リンゴなど一部しか輸入が認められない中国本土では、日本で生産した農作物を輸出するのではなく、日本の栽培技術を活用して現地で栽培することを選択する企業も多い。

世界の施設園芸面積の約75%が集中するといわれている中国市場。様々な進出リスクはあるものの、その巨大市場は非常に魅力的である。今後も、日本企業だけでなく世界各国の農業企業が中国への進出を目指している。