ジャム業界では国内トップブランド。50%以上のシェアを持つアヲハタ。今後のジャム業界は2極化

ジャム業界の大手「アヲハタ(株)」の加工工場を見学させて頂きましたので、簡単に取材メモや関連情報を掲載いたします。
 
アヲハタ(株)は、みかんの缶詰加工とオレンジママレードなどのジャム類の製造を目的として、1932年に広島県竹原市忠海で創業した。「農産加工の美味しさは、その原料によって7割が決まる」の信念のもと、当時すでに柑橘類の最優良産地であった瀬戸内に位置する当地を選び、産地の真ん中で良質の原料選びと技術中心の経営を進めてきた、という。
 
 
ジャム業界では「アヲハタ」は国内トップブランド。中でも家庭用びん詰ジャム市場での市場占有率は約50%で、低糖度ジャムでは約70%のシェアを獲得している。売上高が約196億円(H21年度)。
 
ジャム業界では国内トップブランド。50%以上のシェアを持つアヲハタについて
ジャム業界では国内トップブランド。50%以上のシェアを持つアヲハタについて

<数値はH21年10月期決算より>

アヲハタジャム
<見学の際に頂いたジャム>

 
 
「アヲハタ」ジャムは国内市場のみに流通している。海外展開が難しいのは、日本と欧米のジャム嗜好の違いがあるからだ。海外の朝食で出されるジャムは非常に糖度が高く、甘過ぎると感じた人も多いはず。逆に日本の場合は低糖度ジャムが人気である。ただし糖度が45?50%以下になると液体状になってしまいカビが生えやすいことが最大のデメリットである。「アヲハタ」でも、低糖度ジャムも販売しているが、多くの商品が糖度60%くらいのもの。
 
 
同社では工場見学だけでなく、ジャムの製造体験(手作り)もできる。手作り体験は団体の観光客や子供の食育向けなど、大勢の人々が参加・申し込まれているようだった(見学・手作り体験の申込サイト)。見学させて頂いた工場では、1分間に300本(レーンが2つあり、一つが100本。もう一つが200本)、一日にすると15万本のジャムが製造されていた。
 
 
 
細部に渡るまでのトレースアビリティは当然のこと、客の要望・ニーズに合った商品づくりが徹底されている。最近の消費者は、本物の果物(生)を食べる機会がなく実物を知らないことも多い。例えば、果物の中に種があるイチジクをそのままジャムにしてしまうと、多くのお客様から異物ではないかと、問合わせ・質問が多かったことから、消費者の不安を無くすためにも、種を一つずつ取り除いている。
 
 
 
同社の信念でもある農産加工の美味しさは、その原料によって7割が決まるということから、原料(果物)の調達先確保には、相当のコストと時間をかけている。現在の調達先は、ほとんどが海外であり、例えばブルーベリーはカナダから調達。
 
 
こうした生産現地との交渉は非常に困難な作業であり、自社が要求する規格・品質の果物を生産してもらうためには、継続的な研究を生産農家と一緒に実施しなければならない(さらには大学、農家、自治体等が連携して品種開発を行う場合もある)。以前は主にアメリカ・カナダを中心に調達していたが、最近では中国に変更した果物もある。
 
 
例えば、イチゴはカリフォルニアから調達していたが、現在は主に中国からである中国での契約栽培メリットは、自由に品種を持ち込みながら研究することができる点にある。しかし、安全・安心や自社の要望・要求をしっかり守ってくれるのか、こうした交渉や指導には相当の時間がかかったようだ。
 
 
 
このようにして日本の消費者の嗜好にあったジャムが製造されており、市場に流通しているジャムはイチゴ、マーマレード、ブルーベリーの3つで8割のシェアとなり、その他の新商品も定期的に販売しているものの、はやり定番ジャムが強いという。以前にはバナナジャムや野菜ジャム(サツマイモ)も開発してみたものの失敗した。
 
 
どこのスーパーやコンビニでも見かける「アヲハタジャム」。50%以上のシェアを持つ同社に対して、最近では高価格帯のジャム:コンフィチュールという言葉を提案しながら、新たなカテゴリー・市場を生み出そうと試みている企業も多い(コンフィチュールはフランス語。ジャムと同じ意味)。
コンフィチュールは種類豊富で、果物に酒やお酢などを混ぜた商品など、各社がこぞって新商品を開発している。
 
 
例えば、百貨店などへの販路を拡大しつつある企業の一つにセゾンファクトリー社などがあるが、こうした低価格帯のジャムに対して、より付加価値を付けた形(高級感のあるパッケージデザインや新たな組み合わせの商品、さらにはライフスタイルの提案まで)といったジャム市場の2極化が、今後も進んでいくのではないだろうか。
 
ジャム業界では国内トップブランド。50%以上のシェアを持つアヲハタ。今後のジャム業界は2極化が進むのか・・・
<セゾンファクトリーのコンフィチュール>

 
 

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植物工場・農業ビジネス編集部

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