ISID、ブロックチェーンで農産物の生産・流通・消費履歴を保証するトレーサビリティ実証実験を開始

 株式会社電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーションラボ(イノラボ)は、有機農産物の生産から最終消費までサプライチェーン全体にわたるトレーサビリティを、ブロックチェーン技術で保証し、近年関心が高まる「エシカル(倫理的)消費 ※1」の真正性を担保・可視化する実証実験を開始する。

ISID、ブロックチェーンで農産物の生産・流通・消費履歴を保証するトレーサビリティ実証実験を開始
本実証実験は、イノラボが推進する研究プロジェクト「IoVB(Internet of Value by Blockchain)※2」の一環として実施するもので、宮崎県綾町、シビラ株式会社、パナソニック株式会社が参画するほか、東京・神保町のイタリアンレストラン「レアルタ」が実験用エシカルメニューの提供、UPR株式会社が輸送用IoTセンサーの提供で協力します。


本実証実験では、この仕組みが近年、新たな消費のあり方として関心を集め、「消費者基本計画」(2015年3月閣議決定) ※3 にも盛り込まれた「エシカル消費」の喚起・促進につながるのではないかという仮説のもと、次の3点を検証していきます。

一つ目は、これまで実証してきた生産過程だけではなく、流通や最終消費まで含めた農産物のサプライチェーン全体にわたるトレーサビリティを、ブロックチェーンで保証する仕組みを構築しうるかという点。

2つ目は、ブロックチェーンに記録された情報を、どのようなユーザー体験(UX)を通じて消費者に届ければ、その注文行動に影響を及ぼしうるかという点。

そして3つ目は、農産物のトレーサビリティが前述2点の実証により担保・可視化されることで、当該サプライチェーンに関わる個々人や、その周囲(SNS でのつながりを含む)の人々のエシカルな行動が喚起・促進されるかという点です。


■実証実験の概要と流れ、各者の役割■
 ・期間:2018 年5 月19 日(土)~5 月末(予定)
 ・場所:
  生産地/宮崎県綾町の協力農家
  最終消費地/レストラン「REALTA(レアルタ)」(東京都千代田区)
   *流通経路は一般の宅配サービス(複数)を利用


※1 エシカル消費:エシカルは倫理的・道徳的の意。環境や人体への負荷、社会への貢献などを重視して生産された商品やサービスを選択的に消費する行動や理念を指す。

※2 IoVB (Internet of Value by Blockchain): ISIDイノラボがGuardtime、シビラ株式会社との共同で取り組む、ブロックチェーン技術を活用して地方創生を支援する研究プロジェクト。

※3 出典:消費者庁ウェブサイト「消費者基本計画」 http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/basic_plan/pdf/150324adjustments_1.pdf


<実験の流れ>
① 綾町では、生産者および管理者(役場の検査官)が、町独自で定める自然生態系の保護評価指標に基づいて、生産履歴や土壌品質検査の結果をブロックチェーンに記録する。

② 出荷用ダンボール一つ一つに、照度、加速度、温度を検知できるIoT センサーを同梱して出荷。これにより、輸送中に箱が開閉されていないか、適切な温度・場所で保管されていたか、過度な衝撃が加わっていないかなどがモニタリングでき、逐次ブロックチェーンに自動記録される。

③ レストランでは、綾町野菜を用いた実験用エシカルメニューを提供。来店客が店内でストレスなくエシカルメニューを認知・選択できるよう、専用UX デザインによるメニューを用意するほか、スマートフォンに差し込むだけで綾町野菜の動画を閲覧できる機器(バッテリーレス型イヤホンジャックドングル)を提供する。

④ エシカルメニューの注文客だけに別途渡されるドングルをスマートフォンに差し込むと、消費履歴がブロックチェーンに記録される。
この記録はSNSアカウントと連携可能なため、注文客をインフルエンサーとする能動的な情報拡散が行われたか、そこにどのような共感や評価が集まり、フォロワーの行動が誘発されたかという履歴がブロックチェーン上に蓄積され、生産者やレストランへのフィードバックとなる。