アグリメディア「シェア畑」新規開設を強化、来年度内90農園体制へ

 サポート付き市民農園「シェア畑」を運営する、株式会社アグリメディアでは3月の、東京・世田谷、神奈川・川崎でのオープンを皮切りに、今春に計10農園以上を開設する。これにより、全シェア畑の数は70農園を突破します。

アグリメディア「シェア畑」新規開設を強化、来年度内90農園体制へ
シェア畑は『2022年問題』に絡んだ、農地の賃借がしやすくなる法改正(今国会で成立見込み)を追い風に、今夏以降もさらに新規開設を加速させます。

既に今秋に開設を予定している農園もあり、2018年度内に90農園、8億円規模のサービスとすることを目指します。その他、既存の3農園を増設するなど、事業を拡大します。

関西エリアでも本格展開、15農園体制へ

今春から本格的に関西エリアでの展開もはじめます。2017年8月に、大阪・八尾、兵庫・明石に開設し、八尾は開設以降ほぼ満稼働の好調ぶりです。

関西エリアでも需要が見込めることから、今春に大阪、兵庫に3農園を開設するほか、秋にも開設を予定しており、関西エリアだけで2018年度内に15農園体制を目指します。

サポート付き市民農園「シェア畑」について

「シェア畑」は、耕作放棄地や遊休農地を、農地として再生させ、サポート付きの市民農園として、畑を小区画ごとに契約者が利用するサービスです。

2012年に埼玉県川越市に1号農園を開設以降、順調に農園数を増やしています。

アグリメディア「シェア畑」新規開設を強化、来年度内90農園体制へ
特徴は、農作業に必要な農具や肥料、苗を全て農園に用意し、利用者は“手ぶら”で行える点です。

また、野菜づくりの専門家「菜園アドバイザー」が勤務しており、定期的な講習会のほか、いつでも利用者に指導・アドバイスする体制を敷いています。

野菜作りをしたくても「道具がない」「やり方が分からない」「忙しい」といった理由でできない人が多く、そうしたハードルを無くしたサービスです。利用者の8割は初心者ですが、「初めてでも収穫できる」と好評です。

『2022年問題』対策の新法案施行で、
シェア畑の新規開設に追い風

今国会で成立見込みの「都市農地の貸借の円滑化に関する法律案」の施行により、これまで「シェア畑」を開設したくても諦めてきた一部の土地所有者が、「シェア畑」を開設しやすくなります。

開設しやすくなるのは、「生産緑地」という土地の所有者の一部の方です。

「生産緑地」とは、都市部の農地を保全する目的で、国から指定された地域です。「生産緑地」に指定されると、「固定資産税の減額」を受けられる一方で、農業用途以外の建物は建てられません。

また、土地所有者自身が農業を営むことを条件に「相続税の納税が猶予(先送り)される」という優遇措置を受けることもできます。


現在の法律ですと、この「相続税の納税猶予」の優遇措置を受けている土地では、「シェア畑」のような『貸し農園』を行うと、これまで納税を猶予された分も遡って、多額の相続税を支払わなくてはなりませんでした。

その負担が重く、そうした土地では、「シェア畑」開設を諦めざるを得ないケースがありました。

今国会での法改正により、「相続税の納税猶予」を受けたままでも貸し農園が開設できるようになり、土地所有者は企業やNPO法人などに農地を貸しやすくなります。

実際に、現在「相続税の納税猶予」を受けている方で「新法案が施行されてから、相続税の納税猶予を受けたままシェア畑を開設したい」と待機している方も既におり、この改正をきっかけに、さらに農園開設のペースが加速すると見込んでいます。

農林水産省は、今国会に同法案を提出予定です。また、これに先立ち都市部の「生産緑地」に関する税法改正も、既に閣議決定(2017年末)されており、今夏には新法案が施行されるのではと言われています。

『2022年問題』について

「生産緑地」に指定され農地として守られてきた土地が、2022年に一斉に宅地に代わり、地価下落や空き家問題に発展するとされている問題。

「生産緑地」は、三大都市圏を中心に全国で約13,000ha(東京ドーム2375個分)あります。

「生産緑地」は、税の優遇を受ける代わりに、「30年間の農地としての維持」を義務付けられてきました。その制度がはじまったのが1992年。30年を経過するのが2022年となり、約8割の生産緑地の農地として維持する義務が切れます。

生産緑地の所有者は、30年が経過した時点で、さらに10年間の生産緑地指定の延長を申し出るか、または市町村への買い取り申請を行うことができます。

所有者が申請しても、市町村が買い取りをせず、他の農業関係者も購入を申し出なかった場合は、生産緑地の指定が解除され、宅地への転用が可能になります。

市町村は、予算の制限もありほとんど買い取れないのでは、と予測する専門家もいます。

農地だった土地がマンションやオフィスビル、老人ホームやコンビニに代わってしまうと言われ、住宅の大量供給による住宅価格の下落、新たな空き家の増加が進むのではないか、と予測されています。

この2022年問題に対し、「営農を前提として企業やNPOなどの法人に農地を貸す」という第3の選択肢を選びやすくし、都市の農地を保全しようと国が様々な政策を行っています。前述の「都市農地の賃借の円滑化に関する法律案」もその一つです。