(外食企業の現状)低価格競争による中国産食材の利用。安全/安心が高まる中、自社での農業参入の検討も視野に入れる企業も増加

最近発表された、日本経済新聞社の2009年度飲食業調査(外食主要527社を対象:有効回答232社)によると、食中毒など感染症などの発生時対応マニュアルを整備している企業は、「実施済み」と「今後整備・実施予定」を合わせると84・4%にも上る、という。
 
(外食企業の現状)低価格競争による中国産食材の利用。安全/安心が高まる中、自社での農業参入の検討も視野に入れる企業も増加
 
もうすぐ梅雨の時期であり、食中毒のリスクも高まる。一度、社会的な信用を失ってしまうと、信頼回復には相当な時間がかかり、過去の事例を見ると倒産する企業も多い。発生リスクを下げるための努力が必要であり、万が一、発生した場合には迅速な対応が迫れるだろう。
 
 
こうした安全管理に対する関心の高まりから、各社とも食材確保には細心の注意を払っており、契約農家やカット工場の生産工程/安全管理にも立ち入り検査を実施している企業も多い(実施済み、今後実施予定を合わせると8割弱)。
 
 
そして、安全性と同時に実現しなければならないのが低コストである。5月上旬まで続いた国内野菜の高騰では、東京都中央卸売市場での卸売価格が、キャベツが平年(過去5年平均)の2.02倍、レタスが1.75倍に上昇した(4月15日時点)。
 
 
しかし、外食企業にとって、食材の調達コストが高くなろうとも、提供するメニューの販売価格を変更することが難しいケースがほとんど。ちゃんぽんなどで使う野菜を全面的に国産に切り替えたリンガーハットのような事例もあるが、低価格競争が進むなか、国産食材の仕入れにかかるコスト増を懸念する企業も多く、中国産食材を利用する企業も多い。
 
調査でも中国産食材を「全く利用しなかった」は12・9%にとどまり、「利用した」企業は80・2%で、中国産食材への依存度は依然高いようだ。
 
 
 
農業への参入済み・検討企業は2割ほど。しかし資本力のある大企業がメイン

そこで注目されているのが自社での「農業参入」である。生産した農作物をそのまま店舗利用でき、「安全・安心」且つ、安定的な調達先の確保にもつながる。しかし、栽培ノウハウが乏しい外食企業では参入しても失敗するケースが多い。こうした失敗をしないためにも、農家との共同出資による農業生産法人を利用する方法も考えられる。
 
 
また、参入当初は計画通りにいかず、数年間の赤字は覚悟する必要がある。これは参入事例から判断しても明らかであり、数年での黒字化は大成功と呼べるだろう。
 
 
さらに安全性と安定価格での供給を実現するためには「技術」も必要となる。気候変動の影響を受けやすい土壌栽培(初期投資が低い)と同時に、施設・養液栽培(ハウスにハイテク技術を導入したものから、最近の植物工場といったものまで)の利用も検討にいれるべきである。
 
 
生産工程管理において企業ノウハウが生かせる場合だってある(例:いかに人件費を下げるのか、効率的に作業を進めるための工夫、人材配置、生産コストの削減には企業の経営ノウハウも応用できる部分が多い)。施設内では気候変動の影響も少なく、通年的に安定供給でき、トレースアビリティが容易、高齢者や障害者の採用だって可能となる。
 
 
もちろん水耕栽培に不向きな作物もある。その外食企業にとって自社で生産すべき品種を選択し、どの栽培方法が良いのか、しっかりと判断していく必要があるだろう。
 
 

外食企業による農業参入について
外食企業21社(9.0%)が農業に参入済みであり、居酒屋3位のコロワイドや、うどん店のはなまる、といった24社(10.3%)が参入を検討している。検討企業の「はなまるうどん」は、自社のうどんの風味に合うネギの開発を2、3年内に栽培開始するという

 
 

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植物工場・農業ビジネス編集部

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