代替肉ブームの到来、海外の市場動向レポート

代替肉がもたらす食肉生産のビジネスモデルの変化

 代替肉の普及は食肉業界の「タンパク質ビジネス」化を進めることになるだろう。それは、消費者にとって「肉」が必ずしも動物由来のタンパク質である必要がなくなった状態を意味し、加工されたキノコや大豆などが「肉」の市場のシェアを占めていくということである。

そして、この動きの中で、食肉産業は、製薬会社や種苗会社のように、研究・開発技術や特許制度への依存をさらに強めていく可能性がある。

顕著な例が、牛の幹細胞をシャーレで培養して人工的に製造する「培養肉」である。この取り組みは、主にオランダや英国などで進められており、従来の畜産農業にみられる環境問題を解決する可能性を持つことから「クリーン・エネルギー」になぞらえて「クリーン・ミート」とも言われる。

従来の畜産業とは異なる、タンパク質の研究・科学ビジネスへの転換

 もちろん、消費者が「食事の由来」(原料、生産地、生産方法など)を知ろうと求めている中で、このような、ともすれば不気味とも感じられる「培養肉」が急速に普及するとは考えにくいが、この培養肉開発の根底にも、植物由来代替肉と同じく、新たな技術で「肉」を製造しようという動きがあるのは確かである。

つまり、培養肉は「草原で牛を育ててきた」人類古来の文化の延長線上にはない「研究所で肉を培養製造する」という文化へのショッキングな大転換を投げかけており、「牛肉」や「豚肉」という概念が「タンパク質」に一本化され、食肉ビジネスが純粋な科学ビジネスとなるような、異次元の将来を提起していることに留意する必要があるだろう。

米国では現在、1年に200億個ものハンバーガーが消費されているとされる。ハンバーガーそれ自体の数の膨大さもさることながら、この食事スタイルの中で人々が間接的に消費する水分、餌(大豆、コーンなど)、抗生物質などは実に膨大なものである。

代替肉は、運用次第ではこういった状況の解決に役立ちうる存在であり、産業が健全な発展をしていくことを望みたい。


* 本資料の内容は筆者の個人的見解であって、所属する機関等の意見を代表するものではありません。

投稿者プロフィール

八隅 裕樹
八隅 裕樹
・神戸大学経営学部 卒(2012年)
・兵庫県信用農業協同組合連合会 入会(2012年~現在)
・コロンビア大学ビジネススクール 客員研究員(2017年~現在)

【資格】
・中小企業診断士 ・応用情報技術者

【研究】
・農業、食品産業 ・農業金融、協同組合金融 ・金融・経済史