富士キメラ総研、農業など業種特化型のITソリューションの国内市場調査結果を発表

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研は、業種特化型と業種共通型の視点を軸にITソリューションの国内市場の調査を行い、その結果を報告書「業種別ITソリューション市場2016年版」にまとめた。

少子高齢化に伴う労働力の減少や国内需要の成熟化を背景に、今後大幅な需要拡大が期待しにくい市場環境の中で、売上や利益の向上を目的とした業務の省力化や省人化、あるいはノウハウの共有や継承のためにITソリューションの活用がより重要視され、特に業種固有の業務フローや商慣習などに対応した業種特化型の需要増加が予想される。

 この報告書では、農業、建設業、製造業、運輸業、小売業、金融業、不動産業、宿泊業、外食業、学校教育、医療業・社会福祉/介護事業、地方公共団体の12業種を取り上げ、各業種におけるITソリューション市場の全体動向およびITソリューションのパッケージ、クラウド、スクラッチといったシステム提供形態別市場の動向を分析し、将来を予想した。

<調査結果の概要>
■ITソリューションの国内市場

富士キメラ総研、農業など業種特化型のITソリューションの国内市場調査結果を発表
 2015年度の市場は製造業や金融業を中心に4兆5,004億円となった。2020年度は2015年度比13.5%増の5兆1,089億円が予測される。また、2015年度に業種特化型の占める割合は63.6%だったが、業種固有の業務フローや商慣習などに対応したITソリューションの需要は今後も増えるため2020年度には65.0%に高まると予想される。

 業種別では、政府がIT活用を推進している農業や学校教育などの大幅な伸びが予想される。農業は就業人口の減少や就業者の高齢化などの課題解決策としてのIT活用、学校教育は総務省や文部科学省の推進によるITの導入が期待される。

また、製造業はIoTやビッグデータ、ディープラーニングなどの新技術を生産分野に応用する動きが強まり、生産業務に関わるITソリューションへの投資が伸びるとみられる。また、外食業はタブレット端末の普及を背景にモバイルPOSシステムや予約管理システムの導入が進むと予想される。一方、運輸業や金融業などは低い伸びにとどまるとみられる。

■システム提供形態別
富士キメラ総研、農業など業種特化型のITソリューションの国内市場調査結果を発表
 2015年度はパッケージ型の構成比が最も大きく53.1%を占めた。テンプレートの活用やカスタマイズによって、スクラッチ型より少ない工数でユーザーの業務に最適化なシステム開発が可能であり、メンテナンス性も優れているため、今後はユーザー仕様に合わせた個別開発であるスクラッチ型からの移行需要を獲得し2020年度の構成比は59.1%に高まると予測される。

 特に農業、製造業、不動産業でパッケージ型の増加が予想される。製造業はPLM(製品ライフサイクル管理)/PDM(製品データマネジメント)とMES(製造実行システム)、不動産業は売買仲介システムや買取再販システムなどを中心に利用が進むとみられる。一方、学校教育や宿泊業、医療業・社会福祉/介護事業などは、クラウド型への移行や新規導入が増えるためパッケージ型の構成比は縮小が予想される。

 クラウド型はSaaS(マルチテナント型)、ASP(シングルテナント型)、共同利用型サービスを対象とする。初期投資を抑えながら迅速にシステム構築が可能なことや、導入規模に応じた柔軟な拡張性などの利点がある。

また、システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせることで投資対効果を高めるといった考えが浸透しつつあることもクラウド型の成長要因としてあげられる。クラウド型の構成比は2015年度に13.5%であるが、今後大きく伸びるとみられ2020年度の構成比は16.9%が予測される。

 業種別では農業、外食業、宿泊業の伸びが期待される。これらの業種はITソリューションの導入が遅れていたが、業務改善を目的に最低限のリソースで可能なクラウド型の導入を検討するユーザーが増加している。また、学校教育、建設業、医療業・社会福祉/介護事業は、各業種に特化したクラウド型の充実により、新規導入が増えるとみられる。

建設業は工事需要の増加によって中小企業を中心にユーザーの裾野が広がっており、構築時の利便性や手軽さにより基幹系システムの統合工事管理システムなどのクラウド利用が増えている。金融業でも大手メガバンクがパブリッククラウドの利用を開始しており、今後の需要増加が予想される。
スクラッチ型の構成比は2015年度に33.4%だったが、2020年度には24.0%に低下が予想される。