両備(当法人の関連記事)が実施した植物工場野菜に関する一般消費者向けのアンケート調査から、一般の人々が「植物工場」に対して、どんなイメージを持っているのか、簡単ではあるが整理してみたいと思う。企業側は認知されている、と当然のように思いがちだが、消費者との認識ギャップが往々にしてあるので、確認のためにもレポートしたい。
最近ではTVを中心として、植物工場に関するニュースが多く流れており、一般消費者の間でも植物工場の存在が、広く認知されつつある。テレビで見て「植物工場」を知っている方が、51%と半数を占めている。また、その他のメディアから「植物工場」の存在を知っている人も含めると、62%が知っている、という結果になっている。
ただし「植物工場」の存在は認知されていても、食する機会(見学する機会)がなく、一般消費者には正確な情報が伝わっていないようである。アンケート結果でも「植物工場野菜を食べたことがない人」が71%と大半であり、自由意見欄でも「一度食べてみたい」「水耕栽培とどのように違うのか」「栄養価が気になる」という意見が多かったことでも明らかである。
その他、気になった点としては、やはり工場での栽培に関する不安である。
当法人が以前、調査した際も同じような意見が多かったが、消費者の多くは「太陽の光をたくさん浴び、土壌で栽培された野菜」に対して、安心・安全、健康的なイメージを持つようだ。
市役所や百貨店など、様々な場所で植物工場が展示され、一般消費者への認知を含むプロモーション活動に対して、全国的な拡大が始まったばかりであり、植物工場野菜に関する一般消費者へのイメージ向上(食する機会、正確な情報の把握など)には、もう少しだけ時間がかかりそうだ。
もちろん、上記のような一般消費者向けの認知活動は他社に任せ、外食産業などの法人・企業向けに植物工場野菜を販売することに力を入れていくのも、一つの戦略ではあるだろう(野菜だけでなく、工場などの技術システムの販売も同様)。
外食産業における「安心・安全」や「安定供給」というものは、絶対にクリアしなければならない課題である。多少の初期投資がかかるものの、無菌ルームで大規模に、年中安定的に栽培できることは、外食産業にとっても有難い技術である(あとは導入コストと得られるメリットの問題だろう)。以下には、そのメリットを簡単に示してみた。
例えば、自社の加工工場などに併設して植物工場を建てた場合、生産から加工、パッキン作業まで一貫して行うことができる。パッキングしたものには、バーコードIDが付与され、出荷時間などの詳細も簡単に追跡することが可能となる。
異常気象や台風により、契約していた農家からの供給が万が一、ストップしてしまうと非常に困る。メニューを急に変更することもできず、仕入れ値が多少高くても、別のルートから野菜等を確保する必要がある。こうしたリスクは植物工場栽培では無い。
完全閉鎖の場合は、無農薬栽培が可能であり、栽培では多くの部分を制御・管理することが可能となる。例えば、野菜の栽培過程でのリスクも軽減できる(隣の農家が散布した農薬が風に乗って、自分たちの畑に来ることだって考えられる)。
店舗併設、または店舗近くに植物工場を構えた場合、トレースアビリティも活用しながら、流通・輸送過程など、最終商品として届くまでの様々なリスクを軽減できる(冷蔵庫が壊れたり、運送過程での様々なトラブルも考えられる)。
野菜をカットして加工する際、一般のハウス・露地栽培(土壌)の場合は、野菜に付着している土や虫を取り除くために洗浄工程が必要となるが、植物工場(完全閉鎖・無菌)で栽培された野菜は、こうした加工プロセスを短縮し、コストを削減することができる。
最近では上記のようなメリットが外食産業でも認知され、大手企業を含めて、次々と自前で植物工場を建設・運営している。ただし各企業が、どういった顧客をターゲットに展開していくのかは、自社における経営資源やビジネスノウハウにより異なってくるだろう。もちろん、外食産業以外にも、運輸・倉庫業や不動産業といった分野からの参入もあれば、教育分野からのアプローチも可能である。
例えば、展示型の植物工場を導入しているスーパーと共同で、日曜日に親子向けの食育イベントや科学の学習体験といったプロモーション活動に参加するこもできる。特に、自社で植物工場を建設・運営する必要なんてない。今後は、各企業がどのような戦略のもと、植物工場関連ビジネスへ参入していくのか、当法人でも継続的に調査していきたい。