理研、植物ミトコンドリアへ選択的に遺伝子導入する手法を開発

 光合成を行う植物を活用し、植物の中でプラスチックなどの化成品や炭化水素などの化成品原料を生産する、という試みが注目されています。化石燃料に依存した物質生産からの脱却と、温暖化の原因とされる二酸化炭素の資源化を同時に実現できる可能性があるからです。

そのためには、植物内で物質やエネルギーの生産を行う葉緑体やミトコンドリアの機能を高める必要があり、それを可能とする遺伝子を、効率的かつ選択的に葉緑体やミトコンドリアへ導入する手法の開発が求められています。

理研、植物ミトコンドリアへ選択的に遺伝子導入する手法を開発
ミトコンドリアへの選択的な遺伝子導入の模式図

 理研の研究者は、これまでに、植物細胞にDNAやRNAを導入することに成功しています。しかし、細胞小器官であるミトコンドリアは、細胞に比べサイズが小さいうえに動きが速いため、物理的な手法では遺伝子導入が難しいと考えられていました。そこで、共同研究グループを組み、ミトコンドリアへ選択的に目的の遺伝子を導入する手法の開発に挑みました。

 共同研究グループは、遺伝子を導入する機能がある「細胞膜透過配列」に加え、細胞内でミトコンドリアへの輸送や移行を可能にする「ミトコンドリア移行配列」を組み合わせたペプチド(複数のアミノ酸が結合した分子)を用いることで、ミトコンドリアへ選択的に遺伝子を導入することを目指しました。

まず、酵母由来のミトコンドリア移行配列のペプチドと、相互作用が期待されるポリカチオン配列のペプチドを用いて融合ペプチドを合成しました。次に、ミトコンドリアでのみ機能するプロモーターを持つレポーター遺伝子を挿入したプラスミドDNA(核外の細胞質にあるDNA)との複合体を作製しました。さらに、この複合体の表面電荷がマイナスになるように調製し、静電的な相互作用を利用して複合体の最表面にプラスの電荷を有する細胞膜透過配列を付加しました。

遺伝子がミトコンドリアに導入されたかどうかは、予め組み込んだレポーター遺伝子や蛍光タンパク質の発現を共焦点レーザー顕微鏡で観察することで確認できます。

得られた複合体をシロイヌナズナの葉に導入し、内部を観察した結果、細胞膜透過配列を加える前の複合体では有効な遺伝子導入が確認できませんでしたが、ミトコンドリア移行配列に加え細胞膜透過配列を添加した複合体では、ミトコンドリアへの遺伝子導入が確認されました。また、核で機能するプロモーターを用いた場合などでも、ミトコンドリアへの有効な遺伝子導入は認められませんでした。

この結果により、ミトコンドリア移行配列と細胞膜透過配列をDNAと組み合わせることで、ミトコンドリアに選択的に目的の遺伝子を導入できることが示されました。(2015年1月15日 独立行政法人理化学研究所プレスリリースより)

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