沖縄県・最大級の植物工場が出荷から約3年で撤退。販路確保・安定生産には長期的な視野が必要

 沖縄県内最大規模の完全人工光型植物工場にて、ベビーリーフなどの生産・販売する株式会社おおぎみファームは、3月3日から商品の出荷を始めた。居酒屋やホテルなどの飲食店から注文や契約が増えている、という。生産規模はリーフレタス換算で、1日に1,500株が可能で、初年度の売り上げは1億円を目指す。

※ 写真は同社のWEBサイトより
沖縄県内にて最大規模の完全人工光型植物工場による出荷がスタート。部屋ごとに栽培品目と温度帯を変えて生産(おおぎみファーム)
生産ルームの1階は、22度と低温に設定しており、リーフレタスやわさび菜など10種類を栽培。2階は25度と熱帯気候を想定した栽培環境を再現し、ハンダマなどの島野菜からルッコラなど10種類を生産する計画。ルッコラは、大宜味の水が影響しているのか味の濃い野菜ができる、という。

メインの生産方式は水耕栽培だが、同社では一部のレーンを、堆肥を使った化学肥料不使用の土耕栽培に切り替え、完全人工光型植物工場では珍しい土耕栽培も試験的に行っている。

生産が安定せずに会社は解散へ

 2013年に総合建設コンサルタント「オオバ」が異業種参入して、100%出資で設立した子会社である株式会社おおぎみファーム(資本金は1千万円)。2014年の3月から出荷を開始し、同年の夏にはリーフレタスやハーブ類、ベビーリーフ商品の本格販売をスタートさせた。

沖縄県・最大級の植物工場が出荷から約3年で撤退。販路確保・安定生産には長期的な視野が必要
しかし、水耕栽培も当初の計画収量を実現できず、研究開発のために導入した土耕栽培では害虫被害も発生した。高い生産コストをカバーするために、メイン商品として高付加価値ベビーリーフの生産に注力し、県内のリゾートホテルや大型スーパー向けに販売先を確保していたが、注文に応じた生産量を確保できず、収益が低迷していた、という。

2017年3月期決算(予定)は売上高が、1,944万円、経常損失は3,810万円と3期連続の赤字となっていた。グループの不採算事業からの撤退を検討してきた親会社のオオバは、2017年4月13日付で子会社の解散を決議した。清算手続きを進め、6月末に賃貸工場を退去する。

 同社では大宜見村から敷地面積1,300m2の工場を賃借した。工場部分の面積は約400m2、植物工場施設の建屋は2階建て。1階・2階のそれぞれに4段の栽培棚を導入していた。

投資額は生産設備で約2億円といわれており、生産規模は1日1,000~1,500株(リーフレタス換算)と県内では最大級。さらに、賃貸工場には余裕があり、栽培棚を2倍近くまで拡張できるスペースが確保されていた。