地方農村部と企業をつなぐ、IT化(デジタル・コミュニケーション)による生産性の拡大モデル(インドのタバコ企業)

1910年に設立されたITC (Indian Tabacco Corporation)は、時価総額1兆9000億円ほどの巨大企業である。創業時は国営たばこ会社であり、現在でも、たばこの販売では最大手。その他、せっけんや化粧品などの日用品、ホテル事業といった分野でも大規模、かつ多角的に展開しており、2000年には農業関連事業にも参入している。
 

 
同社は、都市部から離れた地方の農家と強いパートナーシップを結ぶことに力を入れ、「e-Choupal」という独自のコミュニケーション・モデルの確立を目指している。簡単に説明するなら、いわゆる、農村部のIT化である。ただし、インフラが整備されていない農村部の各家庭に、ネットを引くことは難しい(さらに、莫大なコストが必要となる)。そこで、農村部の中でも人口が密集している場所、さらには都市部に近く、道路などのインフラがある程度、整備されている場所を選び、そこにネット環境とPCを利用できる場所(キオスクという)を設置している
 
 
農家に対しては、ITの使い方から始まり、近代的な栽培方法まで指導する。そしてデジタルネットワークを介して、地方の農家ITC社とが、双方向の情報交換が効率的に行えるようになった。
 
 
e-Choupal」を介して、ICT社は、天気や作物の状態、国際価格や市場の状況、近代的な栽培方法といった全ての情報を農家に提供している。かつてのネット環境もない地方の農家は、購入者側が指定した価格に半ば、強制的に従うしかなかった。しかし、「e-Choupal」を利用できるようになってからは、世界の市場価格をリアルタイムに把握することができ、価格交渉もできるようになり、適正価格での販売が可能となった。
 
 
同社(ITC社)では、地方の農家とのネットワークを確立して、将来的には、どういったビジネス展開を描いているのだろうか?一つは有機栽培による農作物をキーワードとして挙げている。同社は農家に対して、情報提供だけでなく、種や肥料、農薬などの供給(農家はITC社から購入している)、そして栽培方法の指導、さらには栽培した収穫物の取引保証まで行っている。
 
 
インドでは、菜種などの油の搾りかす、動物のフンなど有機肥料として使用できる資源が豊富にあり、一方の消費者側(購入者側)では健康、安心・安全、環境に優しい、というイメージから有機栽培は市場でも高い価格で取引されている。同社では、消費者(購入者)のニーズ・嗜好の変化、国による味や色、ニオイ等の好みの違いに合わせた高付加価値のある農作物をつくり、世界市場にチャレンジしていくのが、長期的な狙いだと推測される。
 
 
ITC社の「e-Choupal」は、今では10州の4万の村で、400万人が利用するまでの規模になった。同社と農村とのデジタルによる情報交換により、効率的に製品やサービスを動かすことが可能となり、将来的には、刻々と変化する市場のニーズにも対応できる高付加価値な商品を市場に出すことも可能かもしれない。ただし、今年はモンスーン期(6〜9月)の降雨量が37年ぶりの少雨となり、収穫量が激減する可能性が出てきている。農家、ITC社の両社とも危機的状況になるかもしれないのだ。(こればかりは、いかに情報が入ったとしても、対処の使用がない)
 
 
農業は天候リスク(自然環境リスク)がつきものである。それは農業ビジネスに参入する企業であれば必ず考えなければならない。いくら自然環境リスクが少ない完全閉鎖型の植物工場であっても、扱っているものは生きている植物であり、全てをコントロールすることができないことくらいは理解しておくべきだろう。
 
 

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