吉野家、露地栽培による農業参入。7年目には農業事業から撤退へ

(2010年2月17日記事)
 吉野家は、横浜市で地元の農家と共同で農業生産法人「吉野家ファーム神奈川」を設立する。牛丼用のタマネギを生産し、同社が全量引き取る計画である。農業法人の資本金は170万円で、吉野家が10万円、残りを提携農家などが出資する。

露地栽培による栽培面積は3,200m2、2010年4月までに、タマネギ20トン(牛丼60万食分)の生産を見込む。吉野家ファーム神奈川では今後、5年以内に借り入れる農地を5ヘクタールにまで拡大し、お新香用の白菜や大根などの生産も目指す、という。


企業による農業参入には2つあり、農地そのものを取得可能な「農業生産法人」を設立する場合、もう1つは一般企業のまま農地を借り、リース方式にて農業参入する方法である。現状ではリース方式による参入の方が多い。

改正農地法では、農地の賃借期間も20年から50年に延長され、農業生産法人への出資上限も10%以下から、条件によって50%未満に引き上げられた。

今後も、民間企業による農業参入が加速することは間違いない。農家(生産者)としては、企業側に利用されるだけの存在にならないように、そのプレゼンス(存在感)をどのように高めていくのかが、重要なポイントとなるであろう。

2017年に農業事業から撤退(最新情報)

2017年、吉野家は予定していた収量・品質の玉ねぎ、キャベツ、お米などを生産できないため、生産からは撤退。

同社では最終的に、神奈川、山梨の2カ所にて、合計9ヘクタールの農地にて大規模生産を行っていた。黒字化の目途が立たず、既に農地の返却を行っている。

農地の分散化、生産規模の問題も

失敗の原因は主に2つあるようだ。1つは神奈川にて問題となっていた「農地が分散しており、効率的な生産ができなった」ため。

そもそも外食チェーンが自社食材として採用するコストレベルにするためには、まとまった農地が数十ヘクタールが無いと採用が難しい、と推測される。

栽培技術の問題

(大規模)栽培ノウハウが不足していた、という点もある。自社の品質基準をクリアし、出荷できる農作物が少なく、予定されていた収量が見込めず、同社の農業事業は赤字が続いていた。

集約した巨大農地と栽培ノウハウが必要

外食チェーンの食材コストは非常に安く、集約した巨大農地(分散した農地ではなく)と、生産技術ノウハウが必要だといえる。

特に露地栽培を考えた場合、店舗内で少量しか必要のない食材であれば、全国どこでも生産が可能かもしれないが、メイン食材(吉野家でいえば玉ねぎ等)となると、広大な農地がある北海道のような場所しか国内では適地がないかもしれない。

例えば、リンガーハットのように国産食材への全量切り替えを行う等、外食チェーンは国産にこだわる店舗も増えていることから、こうした失敗事例を分析しながら、次に生かす必要があるだろう。

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