LEDによる植物工場野菜は採算性の合うビジネスになるのか?様々なメリットがあるが、導入コストが現状における課題である

玉川大学でも、LED植物工場研究施設の建設が進行中であり、この研究室では従来の3〜4倍の光強度の赤色LEDを採用し、LEDの耐久性を高め高出力を維持する冷却システムも開発・導入する計画。ここで、様々な実験を行いながら、LEDでも採算性のあう栽培が可能であることを証明するため、実証データ取得に向けての研究を行う予定であるという。
 
 
玉川大学の渡辺博之教授(植物環境制御学)によると、ハーブのスイートバジルを赤色と青色の光で栽培したところ、香り成分の一つが白色蛍光灯の約60倍、別の二つの成分も4〜5倍増加したという。また抗がん剤成分を含むニチニチソウなどの薬草にもLEDの光をあて、薬効成分を増やす研究も進めている。 
 
※ 以下、毎日新聞2010年2月2日の記事を引用(一部)

発光ダイオード:植物工場に注目 光合成促進させ育成期間短縮へ
 
植物にとって最適な生育環境をつくり出せる植物工場が注目を集めている。光を自在に制御できる発光ダイオード(LED)を使った研究も盛んだ。実用化にはコスト低減が課題だが、LEDを使えば光合成を促進させ早く収穫したり、栄養成分を高めることも可能だ。【下桐実雅子】
 
◆光強度3〜4倍
東京都町田市にある玉川大。その一角に、LED植物工場研究施設「フューチャーサイテックラボ」の建設が進む。1階部分の約800平方メートルが栽培研究スペースだ。
 
光合成を促進させる赤色と青色のLEDを組み合わせ、レタスやサラダ菜、ハーブ類を育てる。従来の3〜4倍の光強度の赤色LEDを採用。LEDの耐久性を高め高出力を維持する冷却システムも開発した。3月に完成予定だ。
 
同大の渡辺博之教授(植物環境制御学)は「LEDは高コストといわれるが、効果的に使えば実用化は可能だ。レタスの苗は通常の5分の1ほどの2週間で生育する。この方法でやれば採算は取れるという信頼性のあるデータを出したい」と意気込む。
 
◆さまざまな波長も
なぜLEDなのか。その訳は、植物の光合成の特徴とLEDの特性にある。
 
光合成は、葉緑素(クロロフィル)が太陽の光エネルギーを吸収し、水と二酸化炭素から糖をつくり出す仕組み。太陽の光は紫外線から赤外線まで多様な波長(色)を持っており、葉緑素は赤色や青色の光を吸収しやすい。特に赤色の光が光合成に有効だ。植物の種類にもよるが、健全な生育には赤色に対して青色の光を1〜3割程度加えると効果的とされる。また、発芽したり葉ができるときには、青色の光が重要になる。
 
一方、LEDは白熱灯や白色蛍光灯と違い、さまざまな波長の光を選べる。植物の生育に効果的な光環境をつくるのに適している。
 
◆特定成分を増加
光を制御できれば、植物の特定成分を増やし、付加価値を高めることも可能だ。東海大のデータでは、赤色や青色LEDで育てたサラダ菜は、通常のものよりビタミンC含有量が約4倍多かった。
 
渡辺教授の研究でも、ハーブのスイートバジルを赤色と青色の光で栽培したところ、香り成分の一つが白色蛍光灯の約60倍、別の二つの成分も4〜5倍多かった。玉川大では、抗がん剤成分を含むニチニチソウなどの薬草にもLEDの光をあて、薬効成分を増やす研究も進めている。
 
千葉大も植物工場研究センターを今秋にも完成させる。松戸市に計画中の人工光型施設では、サニーレタス、チンゲン菜、小松菜などをさまざまな波長の光で栽培し、栄養成分や機能成分が最も高まる光を探る。
 
後藤英司・同大教授(環境調節工学)の研究では、サニーレタスの赤色色素で抗酸化作用があるとされる「アントシアニン」が、青い光で増えることが分かった。「青色や紫外線はエネルギーが強いため、植物の防御反応が働き、機能成分が増えると考えられる。ただ、その仕組みははっきり分かっていない」と話し、メカニズム解明にも取り組む。
 
◆黄色で害虫対策
LEDの光は害虫の被害を減らす研究にも利用されている。金沢工業大の平間淳司教授(電子工学、生体計測)は、害虫に多様な波長の光を当て、刺激によって目から発せられる微弱な電気を測定。その結果をもとに、害虫に黄色の光を当てると、交尾が抑制されることを明らかにした。「夜行性の害虫は夜間に黄色の光を受けると、昼間と勘違いするため行動が抑制されると考えられる」と説明する。
 
農家を悩ませるのはオオタバコガなど夜蛾(やが)類の幼虫。黄色の光は幼虫に直接影響を与えないが、成虫の交尾を抑制することで幼虫の発生を減らし、被害を抑える。農薬を減らせる可能性もある。平間教授は黄色のLEDを点滅させ効果を持続させる害虫防除装置を開発、広島県立総合技術研究所での花菊栽培や石川県農業総合研究センターのキャベツ畑での実用化に向けた共同研究を進めている。
 
国の調査では、昨年4月現在、全国で稼働中の完全人工光型植物工場は34カ所で、育成期間の短いレタスやサラダ菜など葉物野菜が多い。需要の大きいイチゴなど実を採る作物の栽培は今後の課題という。

 
 

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植物工場・農業ビジネス編集部

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