氷蓄熱空調と植物工場を融合したシステムにて夏場の空調コスト削減を実現。将来的にはバイオガスプラントとの融合も(土谷特殊農機具製作所)

北海道・帯広市の酪農機械メーカー株式会社土谷特殊農機具製作所では、帯広の本社敷地内にコンテナ型の植物工場を設置、リーフレタスの一種「マルチリーフクイーン」を生産・販売している。


コンテナ内部は、栽培棚が左右2列、上下4段にて蛍光灯にて養液栽培を行っている。光量は自動タイマーで調節可能、室温や湿度はきめ細かくチェックする。ほこりやチリ、病害虫を防ぐエアシャワーも導入。外が雪で覆われる厳冬期も含め、新鮮な無農薬野菜を年間通して安定供給できる。


また同社の植物工場には、冬場に別棟で氷らせた大量の氷を活用する氷蓄熱空調システムを採用している。アイスシェルターと名付けられた施設には、総量約107トンの氷が積み上げられている。氷点下20度前後まで冷え込む真冬の気候を利用して氷を作る。


機密性の高い閉鎖空間内で生産する完全人工光型の場合、照明からの熱により室内温度が上昇する傾向にあり、夏場の電気代がランニングコストにおいて大きな負担となっていた。こうした課題に対して同社では、冬に凍らせた氷の冷気をパイプで送り込み、夏でもセ氏22度前後に保つ。逆に冬は蛍光灯の発熱だけで暖房は不要である。


2010年夏に実験を始め、2012年2月に移動組み立て式の新棟に切り替えた。生産した野菜は食品スーパーのダイイチのほか、帯広競馬場内の観光施設「とかちむら」などに定期出荷しているが、同社では試験的な生産・販売を自らが実践しながら、今後は独自仕様の植物工場システムの販売に力を入れていく。


アイスシェルターに取り組み始めたのは約30年前。北海道大学との共同研究が契機だった。農産物の低温貯蔵で実用化を探るとともに、地元帯広で運営するカーリング場に導入した。一方、エネルギー事業で一足早く花開いたのはバイオガスプラント。家畜ふん尿由来のガスから電気や熱を生み出す。昨夏に始まった再生可能エネルギー固定価格買い取り制度を追い風に、計7基を受注した。


植物工場ではアイスシェルターに加え、バイオガスプラントとの融合も構想する。氷が空調のコストを補い、バイオガスが照明などの電力源となる。「寒冷気候と家畜ふん尿という十勝特有の地域資源を最大限生かせる」「ロシア極東などでも通年農業が可能になる」と輸出にも夢を広げる。(参考:2012年4月12日 日本経済新聞より)